『グレイテスト・ショーマン』試写会。歌とダンスを引き立てる要素が足りない
2018 / 02 / 10 ( Sat )
『グレイテスト・ショーマン / THE GREATEST SHOWMAN』
2018/02/16公開 公式HP:http://www.foxmovies-jp.com/greatest-showman/

1952年の『地上最大のショウ』でも知られるP・T・バーナムを題材にしたミュージカルです。オープニングのダンスでいけると思ったのですが、その期待は次の場面で一挙にしぼんでしまいました。

お話自体は貧乏少年P・T・バーナム(ヒュー・ジャックマン)が憧れの上流階級の娘チャリティ(ミシェル・ウィリアムズ)と結ばれるものの彼女の両親が言うように苦労して仕事を転々とした後に興業という天職を見つけるというシンプルなものです。

話は単純なのですから歌とダンスを魅力的に見せてくれればいのですが、貧乏夫婦が屋上で踊る場面ではいかにもセットで撮影しましたという感じで白けてしまいます。本物の屋上で撮影する必要はないのですが、もう少し違った見せ方があったと思います。ミシェル・ウィリアムズの歌が聞くことができる以外の価値はほとんどありません。この映画は室内/劇場内の場面の方がよいです。

さらに中盤でヨーロッパからオペラら歌手を招聘して、曲を披露する場面があります。吹き替えとはいえ曲中のレベッカ・ファーガソンの見せる表情はとてもいいのですが、曲終了後の彼女の行動は前振りがあまりないために単にバーナムの家庭に波風を立てるため無理やり挿入したようにしか見えません。僕がよく言う「『シェルブールの雨傘』のラストは口パクでも感動できる」とは逆で、これではレベッカ・ファーガソンの無駄遣いです。

僕がいいなと思ったのはフリークスと呼ばれた個性的な人々が主張をし始めるところです。じつは二人いる脚本のうち片方がビル・コンドンなのです。とは言え直接的な同性愛描写があるわけではありません。ただ異人種間恋愛がはじまるところはそれっぽいと感じました。しかしザック・エフロンとゼンデイヤはいいカップルに見えるのはどう考えたらいいのか悩みます。黒人と白人の間に生まれたというゼンデイヤは、色が濃くないのです。彼女が『スパイダーマン』にキャスティングされたときにヒロインは白人であるべきとの意見があったことを考えれば現代でも異人種間恋愛は厳しいままと言えます。今回の彼女の起用が人種の壁は昔は大きかったと言いたいのか、今も厳しいと言いたいのかが伝わってこないのです。あるいは単に人気者を起用しただけでしょうか、彼女の兄役の俳優に色の濃い俳優を起用するというのも安易に感じられ、これまた混乱するのです。

『ラ・ラ・ランド』チームによる楽曲はあまり印象に残らないのですがやはりハイライトは"This Is Me" と"Never Enough" でしょう。"This Is Me" は画がつくと盛り上がるのですがが、ないとそれほどでもないように感じました。"Never Enough"はオペラ歌手が歌う設定なのでドラマチックですがやや単調でさらにに大サビがあると良かったのではと思いました。

『ローガン』で老人を演じたヒュー・ジャックマンは実年齢よりやや若い(推定20~35歳)設定で、この映画のリーダーとしての存在感を見せてくれます。ただ前から気になっていた歌い手としてアクのなさが気になりました。久々のミュージカル出演のザック・エフロンは他の映画では無理してマッチョにしているという印象がありますが、ここでは昔のイメージを保ったまま年を取ったように感じました。ヒュー・ジャックマンとの掛け合いは見ものです。そして株を上げたのはゼンデイヤでしょう。練習してかなり乗れるようになったという空中ブランコを乗りこなしてエフロンと歌う場面は何度かある掛け合いの中では一番好きです。派手な衣装も違和感なく着こなす彼女は貴重な存在と言えそうです。

P・T・バーナムの作ったサーカスは後に「地上最大のショー(The Greatest Show on Earth)」と呼ばれたリングリング・サーカス(リングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカス)ですが、批判のあったゾウのショーを中止などがあって最近その歴史を終えました。やはりあれは動物虐待だったとするにせよ、昔はそれが許されたのだというノスタルジーにするにせよ、現代からの視点があると今作られる意味も込められたと思うのですがその意識はないようです。
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『素晴らしきかな、人生』試写会。アイディアは面白いが役者はあってないように感じられる
2017 / 02 / 22 ( Wed )
『素晴らしきかな、人生』 / COLLATERAL BEAUTY
2017/02/25公開:公式HP http://wwws.warnerbros.co.jp/subarashiki-movie/
素晴らしきかな、人生 ブルーレイ&DVDセット
BD発売日:2017/07/05

監督は『プラダを着た悪魔』のデヴィッド・フランケル。邦題がフランク・キャプラ『素晴らしき哉、人生!』のパクリなのが気になりますが、ウィル・スミスもキャプラ的な映画に出るようになったかと思いながら見始めました。主人公のハワードは広告代理店を経営していて、オープニングではスピーチをするハワード(ここの口のうまさはいつものウィル・スミス)、それは数年前で今の彼は娘さんを亡くして落ち込み仕事もままならない状態で、"愛"、"時間"、"死"に恨みの手紙を出すしまつです。その三つが実体化して彼の前に現れるというプロットは『素晴らしき哉、人生!』のさらに元ネタである『クリスマス・キャロル』からの引用で、この邦題もまんざら的外れでもありません。とうぜんクリスマス時期の話です。

といっても本作のウィル・スミスはフランク・キャプラ映画的な善人でも、スクルージのようないやな人間でもなく、じめじめしているキャラクターであまり似合っていません。彼がアクション・スターから幅を広げるきっかけのひとつとなった作品に『幸せのちから』がありますが、あちらは悲惨な状況に置かれていても前向きだったのでだいぶ印象が違うと思います。ウィル・スミスといえば走る姿が決まる人ですがここでは走らないものの自転車を飛ばして似たスピード感を出しています。

会社の同僚役員たち(エドワード・ノートン、マイケル・ペーニャ、ケイト・ウィンスレッ)は腑抜けとなったハワードでは経営を任せられない状態であると証明するために調査員を雇って例の手紙を入手して、"愛"、"時間"、"死"を俳優に演じさせて彼の頭がおかしくなっていることにしようという作戦に出ます。ここで雇うのがニューヨークの舞台俳優です。演じる俳優の三人中二人がイギリス人(ヘレン・ミレン、キーラ・ナイトレイ)なのがイギリス人俳優コンプレックスを感じさせます。ここで人ではなく概念を演じることで一種の演技論にもなるところが面白いです。また彼らが一応ハワード以外には見えないことにしようとする作戦も笑えます。

僕がこの映画で一番好きなのは「この人もしかして天使(あるいはゴースト)?」と思わせる瞬間が何度かあるところです。そこが本作が『素晴らしき哉、人生!』や『クリスマス・キャロル』からの流れを引き継いでいる点ではないでしょうか。また"愛"、"時間"、"死"が問題なのはハワードだけではないので会社の三人(そう三人だ!)にもサイドストーリー的なものがつくのはいいのですが結果的には中途半端に感じました。

はじめにいったようにウィル・スミス主演映画としては物足りないですし、実力派キャストも適材適所とは言えません。最後の展開も「この人を使っているのだから、なにかあるのだろうな」と思ってしまいました。メンバーを総入れ替えしろとは言いませんが、会社以外の人はもっと知名度の低い俳優にするといった工夫があれば良かったと感じました。個人的に一番もったいないと感じたのはエドワード・ノートンでした。

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『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲』試写会。不倫旅行映画だが、出した結論が意外かも
2016 / 08 / 31 ( Wed )
アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲 / UN + UNE
2016/09/03公開:公式HP http://anna-movie.jp/
アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲 [Blu-ray]
BD発売日:2017/03/02

『男と女』のクロード・ルルーシュ監督と作曲家フランシス・レイという組み合わせによる新作は大人の恋愛映画といって差し支えない内容です。面白い会話もありますがリチャード・リンクレイター監督の『ビフォア』シリーズほどには会話劇に徹していないと思います(あの映画も短い期間を切り取った恋愛映画でした)。それでも二人が急接近するあたりの流れは良いです。

インド版『ロミオとジュリエット』(本当は『ジュリエットとロミオ』)の音楽を付けに来たアントワーヌは大使館の晩餐会で大使夫人のアンナと知り合います。彼女は不妊に悩んでいたので、聖者アンマに会いに行く妊娠巡礼の旅に出かけると告げます。アントワーヌは気分転換も兼ねてアンヌの後を追います。

フランス映画ですし(いやそうでなくても)二人の関係が深くなることは誰にも分かりますが、不倫旅行といったドロドロな映画にはなりません。その理由としては、まずインドでの撮影があげられます。観光旅行的な画で生々しさには欠けますが美しいことには変わりありません。沐浴の場面には誰もがどきりとするでしょう。じつはときおり夢や妄想が挿入されるのですが、つながりが自然すぎて驚きます。その流れで『ロミオとジュリエット』の基になった事件も出てきます(これはさすがに時間軸がどうなのか気になりますが)。

ぼくが気になるのはこの二人と大使とアントワーヌの恋人、合計四人が一堂に会する場面、いわゆる修羅場場面です。やり取り自体は面白いのですが、出した結論が愛の国フランスの人間としては意外に感じられました。面子を重んじる立場にいる人間にとっては恥ずかしい結果に見えますし、一番若い人間が選んだ結論も保守的に見えます(年代は30代、40代、50代、60代というようにばらけています)。もしかして四人で顔を突き合わせてなかったら別の結論になったかもしれません。

主人公アントワーヌを演じたのは『アーティスト』のジャン・デュジャルダン、遊び人ならお得意の人なので安心して見られます。コメディもこなす人なので重すぎることもありません。ヒロインはエルザ・ジルベルスタイン、ジェニファー・アニストン顔だなと思いながら見ていましたが、ここでのストーリーも彼女に重ねて見たりしていました。アントワーヌの恋人でピアニストを演じるのはエルザ・ジルベルスタイン、個人的には彼女の方が気にいりました。

最後の場面というかオチの場面はありがちなのですがこれはこれでロマンティックな表現としておきます。アンマは実在の有名人なのですね。ドキュメンタリー・カメラマンの存在は消化不良でした。

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『グランドフィナーレ』試写会。老いにきちんと立ち向かっていないと思うがラストのマイケル・ケインはいい
2016 / 04 / 15 ( Fri )
グランドフィナーレ / YOUTH
2016/04/16公開:公式HP http://gaga.ne.jp/grandfinale/
グランドフィナーレ [Blu-ray]
BD発売日:2016/11/02

マイケ・ケインといえば『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』でオースティン・パワーズ・パパになって以来第二の(?)黄金期を迎えて引っ張りだこ状態です。オースティン・パワーズの続編は作られず、マイク・マイヤーズの不調を考えれば、これはすごいことだと思います。彼には主人公を支える老英国紳士という役がじつによく似合います。その一方で役を選ばないことでも知られる人で(『ハンナとその姉妹』の演技で受賞意したアカデミー賞授賞式を『ジョーズ'87/復讐篇』の撮影で欠席した話は有名です)。老人が主役の映画は多くないこともあり、彼が主役と言っていい作品は新鮮です。

マイケ・ケインが演じるのはスイスで悠々自適なホテル暮らしをしている引退した作曲家フレッド・バリンジャー、英国王室から誘いが来てバリンジャーの代表曲「Simple Song #3」(アカデミー賞歌曲賞ノミネート)を演奏するように頼まれるのですが、引退を理由に断ります。この曲にまつわることを物語の中核となります。そこに加えて父のアシスタントをしている娘レナ(レイチェル・ワイズ)のプライベートな問題が起こります。

ホテルには友人の老映画監督ミック・ボイル(ハーヴェイ・カイテル)はバリンジャーとは対照的におそらく最後の作品になるであろう新作に力を入れています。人は老後をどう過ごすか、この二人の対比がもう一つの軸になっています。しかしながらそれはうまくいっていないように思います。

老人の余生や老いをテーマにした作品という意味ではイタリア人監督、パオロ・ソレンティーノの前作『グレート・ビューティー/追憶のローマ』に通じます。その前の英語作品『きっと ここが帰る場所』は主人公が盛りを過ぎたロッカー(ショーン・ペン!)でしたので、「老い」がテーマの作品の変奏曲と言えると思います。『グレート・ビューティー/追憶のローマ』を見た時には僕にはまだ理解できない世界だなと感じたのですが、今作を見てみると化けの皮が剥がれたというか、バリンジャーの苦悩を正面から描こうとせずに、逃げているように感じました。原題は『YOUTH』ですし、一発芸俳優ジミー・ツリー(ポール・ダノ)や実在の歌手パロマ・フェイスのPV(ファレル制作の曲)が流れる場面を見るとそう感じるのです。ジェーン・フォンダが短い時間で登場させてインパクトを出そうとしたのでしょうが空回りしているように思います。

その一方でアルプスの山の風景やラスト近くの有名な街など、美しいショットは多いのでそこは楽しめますが、これをフェリーニ風と言うのは逃げだと思うのです。みんなが期待するマイケ・ケインが最後にほんの少しですがそこはとても楽しめました。

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『パディントン』小さな笑いがたくさん起こるファミリー映画
2016 / 01 / 13 ( Wed )
パディントン / PADDINGTON
パディントン ベアオフィシャルサイト
2016/01/15公開 公式HP:http://paddington-movie.jp/
パディントン [Blu-ray]
BD発売日:2016/08/03

イギリス産児童文学『くまのパディントン』についてはほとんど知らずに、この紳士熊に関してはどこかの企業がイラストをキャンペーンくらしか知りませんでした。そうした簡素なイラストのイメージしかなかったのでこれがCGでどう再現されるか気になりました。そこで思い出したのが直前に見た『I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』でした。こちらはいかにも2Dな絵柄を3Dアニメにするための工夫がしてあります。簡単に言えばアクションなど動きのある個所は立体的に、それ以外の箇所は2Dの止め画を大事にするという方法です。おそらく作り手の頭の中には『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』の失敗(失礼)があったのだと思います。個人的には嫌いではないのですが3Dパフォーマンス・キャプチャーによる映像は少し気持ち悪さが残り、3Dにする無理さも感じました。『パディントン』のCGもそんなことをふまえ(?)遠目から見るとカワイク、近くからみると毛が意外にゴワゴワしていていてクマらしさも出しているという具合にうまく作ってあります。

真摯なクマという設定ですが、故郷ペルーで起こすドタバタから分かるようにけっこう間抜けなのがいいです。野生本能がその原因になるところもおかしいです。パディントン駅からブラウン家のお世話になるまでは、非現実的なのですがパディントンは性格がいいのかいい感じでなじんでゆきます。パディントンはペルーから親戚の知り合いの探検家を訪ねてロンドンへ家探しをするというストーリーは身近にある幸せを再確認するという定石通りですがファミリー向け映画として文句はありません。ギャグ映画ではないんで大きな笑いというのはないのですがクスクスと小さく笑える箇所がたくさんあります。

ブラウン家は夫婦に姉と弟、そして家政婦という家族構成です。サリー・ホーキンス無駄遣い映画にいい映画なしを唱えていますが、この映画の扱いが最高だとは言いませんが悪くありませし、相変わらず笑顔がチャーミングです。夫にはヒュー・ボネヴィル、ドラマ『ダウントン・アビー』のイメージを受け継いだ父親役です。あちらの家族よりは楽でしょうが、それでも苦労はあります。姉は不機嫌なアビゲイル・ブレスリンみたいな外見で、やはり色々とある年頃です。パディントンの声はベン・ウィショー、彼らしさを出すよりは紳士なクマのほうを重視して悪い印象はありません。ここまでは好感を持てますが残念なのが悪役ミリセント役のニコール・キッドマン、悪役の造形がありきたりで残念でした。『ライラの冒険 黄金の羅針盤』ではまだ意味がある役でしたが、ここは単なる悪役です。トム・クルーズ映画のパロディに至っては見ていて少し寂しくなりました。それでもファミリー映画の基本を押さえているのでそれを望んでいる人にはお勧めできます。

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