『ジャージー・ボーイズ』、『ハミングバード』と同じく監督の資質と合わないが光る部分も
2014 / 09 / 17 ( Wed )
ジャージー・ボーイズ / Jersey Boys
2014/09/27公開HP: http://wwws.warnerbros.co.jp/jerseyboys/
ジャージー・ボーイズ ブルーレイ&DVDセット (初回限定生産/2枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray]
BD発売日:2015/02/04

クリント・イーストウッド監督の新作です。イーストウッドは自分でスコアを書き、チャーリー・パーカーの伝記映画『バード』という作品もありますが、なぜミュージカル?と思ってしまいます。イーストウッドは脚本を担当しない映画人でありながらきちんと作家性もしっかり持っている人なので彼の作品だと感じる部分はあります。

ザ・フォー・シーズンズに関しては数枚のベストCDを持っていましたし、一時期ミュージカルのCDを安く集めていたのでこの舞台版のCDは持っていました(なのでどこで終わるかがか分かります)。この映画化の話を聞いたときは、これは難しいと思いました(イーストウッドの前にジョン・ファヴローにも声がかかりました)。なにせファルセットからふつう声まで歌いこなすフランキー・ヴァリを演じるのはそう簡単なことではありません。そこはミュージカル・キャストを中心に起用して解決しました。

『ジャージー・ボーイズ』は既存の楽曲をもとに物語を作り上げた『マンマ・ミーア!』のようなジュークボックス・ミュージカル・スタイルではなく、グループの歴史を追った音楽家の伝記映画スタイルです。そうした映画ではコンプレックスや問題(ドラッグ、酒、浮気)がつきもので、それを描くことでキャラクターを掘り下げるのですが、本作はそうした描写もあるものの掘り下げは不十分です。また音楽映画としてはフランキー・ヴァリの歌声の特徴的なことやサウンドをうまく説明していないとも思いました。あのファルセットの変な部分をもっと扱ってほしかったです。

その意味では音楽映画としては物足りません。「シェリー」のヒットまでに長めの時間をとっているのはいいとしても、他のグループとの比較などがまったくありません。一見古いサウンドに聞こえるフォー・シーズンズですがビートルズをはじめとするブリティッシュ・インヴェイジョンや新しい時代のロックの波にも耐えて、(映画には出てこないメンバーやスタッフの力も含めて)70年代までヒットを放っていたという事実はもっと評価されてといいと思います。ただそうしたグループ内の事情は少な目で、メンバー交代やヴァリのソロとの関係性についてはほんの少しだけふれて、レコード会社移籍などは無視されます。

映画として気になる点が2箇所あります。一つ目は異様にテンポが悪いことです。話の性格上歌が登場人物の心情を歌い上げるといのはほとんどなく、歌の場面はレコーディング・スタジオか実際のステージ(ライブハウス、テレビ、どこかのショー等)になります。この構成だと歌が流れている間に話は進みません(レコーディング現場から始まり、終わるころには曲がヒットというのはあります)。もう一つは予告編にもあったようにキャストがこちらに話しかける場面があることです。これ自体はウディ・アレンなども使う手法で珍しくありません。最初に脇役の人がこれをやるので、この人がこれの担当かと思ったら、他の人もやります。本来ならナレーションでやることの代用です。これをやるのが一人だけなら物語る人として有効だと思いますし、舞台なら一人にスポットが当たるのでしょう。映画の表現方法としては回数が多すぎて失敗していると思います。

舞台版の俳優をメーンに起用しているので正直に言うと地味で、華がないという人もいそうです。フランキー・ヴァリにしても声以外の部分は弱いです。そうした要素よりも歌を聞かせるということなのでしょう。そんな中キャラクターが立っているのはマイク・ドイルが演じるプロデューサーのボブ・クルー、どんな人かは一応伏せておきますが、ドイルは『シェイムレス』シーズン3に出演していてそこでも同じ設定でした。有名俳優ではクリストファー・ウォーケンがマフィア役で出ています。登場時間は短く、仕置きとして拳銃をぶっ放すということもなくインパクトは薄いように感じますが彼の存在にも意味があると思いますので後ほど。あと監督の娘(母親はフランシス・フィッシャー)フランチェスカもカメオ出演しています。

タイトルの『ジャージー・ボーイズ』はニュージャージーのイタリア系アメリカ人と読めます。冒頭に地元から逃げる方法が出てきます「軍隊に入って死亡。マフィアに入って死亡。有名になる」。ここで出てくるマフィアは『ゴッドファーザー』というよりはマーティン・スコセッシ映画(関連のある俳優も登場します)に近いです。彼らが大事にするファミリーはマフィアの血の結束ではなく近所付き合いの延長線上にあります。序盤のシーンをアレンジして最後の方に出てくるある場面、ここは確かにボーイズの友情が確かに見て取れます。アウトローやはぐれ者を描くのがうまいクリント・イーストウッドが描きたかったのはそんな世界ではないでしょうか。

歌を聞かせる構成になっているために物語の流れが悪くなり、音楽映画としての目の付け所がいいわけではないという具合にバランスは悪いのです。そんな中で印象に残ったのは次の箇所です。日本予告で一番押している「君の瞳に恋してる」の場面、この映画では珍しく曲が心情を物語る場面になっていて、やはり身にしみます。そしてフィナーレ、なんだかんだ言っても盛り上がります(曲も大好きなのです)。

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コメント
--こんばんは。--

なかなかシビアなレビューですね。
イーストウッドは当初『スター誕生』を映画化する予定だったとか!?
この御年で、やり残しているのはミュージカルということだったのでしょうか?
そのチャレンジ精神を買いたいです。
by: えい * 2014/09/25 22:25 * URL [ 編集 ] | page top
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