『グローリー -明日への行進-』試写会。メーン3人以外は地味目な俳優で親近感、現代に通じる問題も
2015 / 06 / 14 ( Sun )
グローリー -明日への行進- / SELMA
2015/06/19公開:HP http://glory.gaga.ne.jp/

グローリー/明日への行進 [DVD]
DVD発売日:2016/01/06

意外にもマーティン・ルーサー・キング・Jr.牧師を扱った本格的な劇映画は初だそうです。この前に見た『ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男~ 』とは違って、最近の伝記映画に多い人生全体ではなく一時期だけを描いたものになっています。それも暗殺事件やワシントン大行進(私には夢がある演説)ではありません。IMDBによるとリー・ダニエルズやスティーヴン・スピルバーグといった監督が撮る話があったそうですが、けっきょくは新進女性黒人監督エヴァ・デュヴァネイが担当することになりました。しかし以前の映画化計画の途中で起ったことでしょうが、キング牧師のスピーチの権利がメジャー会社に属することとなり本作では本当のスピーチ内容を使えません。そのことも題材がセルマ(からモンゴメリー)の行進になったことと関係しているでしょう。

映画はノーベル平和賞受賞という晴れの舞台にいながら不安そうなキング牧師の姿から始まります。その後黒人女性アニー・リー・クーパー(オプラ・ウィンフリー)が有権者登録に行ったのにまるでいじめのような質問攻めで受け付けられない様子が描かれます。今でも登録がめんどうなことが多いというアメリカの選挙なのでアメリカ人にとっては相も変らぬ風景としてとらえ、それ以外の国の人にとってはなんて不公平ことをする州(郡)だと思うわけです。さらにはバーミングハムの教会の爆破事件で若い女性が犠牲になることを描くことにで(何度か死人が出る場面がありますが、スロー・モーション多用はやや興ざめします)、差別状況を説明すると同時に、キング牧師がこのアラバマ州を活動の拠点にしなければいけないことも示します。

本作の悪役であるジョージ・ウォレス・アラバマ州知事は今の時代から見ればひどいことを言っている人間なのですが、手ごわい政治家には違いありません。キング牧師は州政府を動かすために、一方ではノーベル平和賞の威光を利用してジョンソン大統領を説得し、もう一方で仲間たちと草の根運動を展開します。前者の話が進まないうちに、後者の運動が次第に暴力で妨害されるようなります。その頂点が一回目の行進の橋での衝突場面です。実際のテレビ・ニュースが全国に衝撃を与えたわけですから、ここは力が入っています。

この映画で一番興味深いところは脚本のベースにFBIの記録が使われているところでしょう。劇中で出てくるようにFBIフーバー長官は盗聴をはじめとしてキング牧師を監視していたので資料はたくさんあります。これを話の骨格として個々のエピソードが肉付けされています。もちろんそれは怖いことであり、FBIがキング牧師の浮気を口実に脅すところは映画『J・エドガー』にも描かれていました。ここでの夫妻のやり取りは立派なものでキング夫人役のカーメン・イジョゴの最大の見せ場です。僕は彼らがもっと取り乱すような描写を監督が選択したとしても責める気にはなりません。この盗聴の件をはじめとするいくつかの不正行為、人権無視は今の時代ではより加速しているのでそれに対してどう対処したらいいのかの勉強になります。

主演のデヴィッド・オイェロウォをはじめとしてオプラ・ウィンフリーにキューバ・グッディング・Jrと『大統領の執事の涙』とキャストがダブります。あちらの映画はホワイトハウスに仕える執事と公民権運動に身を投じる息子という構図を作るために息子のほうはかなり創作が入っていて、その部分はかなりわざとらしいのですが、こちらはそうは感じません。この映画のキャストはテッサ・トンプソン(『ヴェロニカ・マーズ』)、コリー・レイノルズ(『クローザー』)、トレイ・バイヤーズ(『Empire 成功の代償』)、ディラン・ベイカー(『グッド・ワイフ』)とテレビ・ドラマでよく見かける俳優が多いと感じます。予算的な都合もあるのでしょうが、それによって安っぽくなっているかというとそうではなく、どこかで見かけた人ふつうの人たちという感じを受け、隣に住んでいる人がキング牧師の運動に参加しているような印象すら受けます。ロレイン・トゥーサントなどはどこかで見かけた記憶はあるのですが『アグリー・ベティ』のどこにいたのか思い出せないのにいい仕事をしています。テレビ・ドラマというとこの映画はドラマ『グッド・ワイフ』に似た感触があります。人物Aが人物Bの行動を受けて、Xという決定をし、Yという行動を起こす。この過程でX前後をくどく説明はしないところが似ているように思います。難しいわけではないのですが、ぼーっとしていてはいけません。

デヴィッド・オイェロウォはキング牧師を演じるにはややボリュームが足りないというか、ウェンデル・ピアースのほうが似ていると思うのですが映画を見ている間は気になりません。スピーチの部分がオリジナルと比べられなくて済むという特殊事情もうまく作用しているのでしょう。ジョンソン大統領を演じるトム・ウィルキンソン、悪い人ではないものの厄介な問題を抱えている人間が得意な彼のキャラクターに合っています。ジョージ・ウォレスは憎まれ役ですがここでは正面対決は多くないのでこれを演じてもさほど嫌な人間にならずティム・ロスもうまくすかしたような印象を受けました。主題歌担当のコモンもいます。

テーマ:☆試写会☆ - ジャンル:映画

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