『グランドフィナーレ』試写会。老いにきちんと立ち向かっていないと思うがラストのマイケル・ケインはいい
2016 / 04 / 15 ( Fri ) グランドフィナーレ / YOUTH
2016/04/16公開:公式HP http://gaga.ne.jp/grandfinale/ BD発売日:2016/11/02 マイケ・ケインといえば『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』でオースティン・パワーズ・パパになって以来第二の(?)黄金期を迎えて引っ張りだこ状態です。オースティン・パワーズの続編は作られず、マイク・マイヤーズの不調を考えれば、これはすごいことだと思います。彼には主人公を支える老英国紳士という役がじつによく似合います。その一方で役を選ばないことでも知られる人で(『ハンナとその姉妹』の演技で受賞意したアカデミー賞授賞式を『ジョーズ'87/復讐篇』の撮影で欠席した話は有名です)。老人が主役の映画は多くないこともあり、彼が主役と言っていい作品は新鮮です。 マイケ・ケインが演じるのはスイスで悠々自適なホテル暮らしをしている引退した作曲家フレッド・バリンジャー、英国王室から誘いが来てバリンジャーの代表曲「Simple Song #3」(アカデミー賞歌曲賞ノミネート)を演奏するように頼まれるのですが、引退を理由に断ります。この曲にまつわることを物語の中核となります。そこに加えて父のアシスタントをしている娘レナ(レイチェル・ワイズ)のプライベートな問題が起こります。 ホテルには友人の老映画監督ミック・ボイル(ハーヴェイ・カイテル)はバリンジャーとは対照的におそらく最後の作品になるであろう新作に力を入れています。人は老後をどう過ごすか、この二人の対比がもう一つの軸になっています。しかしながらそれはうまくいっていないように思います。 老人の余生や老いをテーマにした作品という意味ではイタリア人監督、パオロ・ソレンティーノの前作『グレート・ビューティー/追憶のローマ』に通じます。その前の英語作品『きっと ここが帰る場所』は主人公が盛りを過ぎたロッカー(ショーン・ペン!)でしたので、「老い」がテーマの作品の変奏曲と言えると思います。『グレート・ビューティー/追憶のローマ』を見た時には僕にはまだ理解できない世界だなと感じたのですが、今作を見てみると化けの皮が剥がれたというか、バリンジャーの苦悩を正面から描こうとせずに、逃げているように感じました。原題は『YOUTH』ですし、一発芸俳優ジミー・ツリー(ポール・ダノ)や実在の歌手パロマ・フェイスのPV(ファレル制作の曲)が流れる場面を見るとそう感じるのです。ジェーン・フォンダが短い時間で登場させてインパクトを出そうとしたのでしょうが空回りしているように思います。 その一方でアルプスの山の風景やラスト近くの有名な街など、美しいショットは多いのでそこは楽しめますが、これをフェリーニ風と言うのは逃げだと思うのです。みんなが期待するマイケ・ケインが最後にほんの少しですがそこはとても楽しめました。 |
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