叩け壁、壊せ壁。2006年冬に『ザ・ウォール』
2006 / 12 / 02 ( Sat )
TheWall

2006年冬にピンク・フロイドの『ザ・ウォール』が意外なところから聞こえてきた。
映画『イカとクジラ』(ヘイ・ユウ)、『ディパーテッド』(コンフォタブリー・ナム)
の予告からである(正確には前者は一年前の映画の本国版予告)。
とくに「ディパーテッド」はヴァン・モリソンが歌うバージョンという変化球で印象に残った。

ここでピンク・フロイドのキャリアを軽く振り返っておこう。
1967年のレコード・デビュー時のメンバーはシド・バレット(g,vo)、
ロジャー・ウォーターズ(b)、ニック・メイソン(ds)、リック・ライト(key)の4人。
比較的ポップなシングル「アーノルド・レーン」「シー・エミリー・プレイ」がヒットし、
サイケデリック時代を象徴する1stアルバム『夜明けの口笛吹き』をリリース。
しかしすぐに中心メンバーのシドの精神が不安定になり、バンドは
シドをサポートさせるつもりでデイヴ・ギルモア(g)を加入させるが、
シドがバンドを抜け結果的にはギターが交代したことになった。
以後独自のサウンドを確立し『狂気』等の作品を発表。
83年の『ファイナル・カット』をもってバンドは休止状態になる。
その後バンド名の権利問題を巡ってウォーターズとギルモアが対立するが
最終的にギルモア主導で再起動させ2枚のスタジオ・アルバムをリリースした。

ちなみに2006年という年は前年の『ライヴ8』でのリユニオンに続き話題の多い年であった。
ウォーターズが長年構想を温めていたオペラ『サ・イラ』を、ギルモアの久々の
ソロ・アルバム(それは実質的なフロイドの活動停止も意味する)を発表。
そしてシドが現世という舞台から過ぎ去ることになった。
今年最後の締めくくりはギルモアによるシド追悼シングルになるはずである。
 CaIra   OnAnIsland
サ・イラ~希望あれ オン・アン・アイランド

さて『ザ・ウォール』はバンドの代表作といっていい。
とくに「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール(パート2)」のヒットもあって
アメリカでは『狂気』と並ぶ代表作と認識されているようだ。
日英では『狂気』以前の『おせっかい』『原子心母』への評価はもちろん
『夜明けの口笛吹き』だけというバレット至上主義者も少なくない。

個人的にも初めて聞いたフロイドのアルバムで、図書館で借りて(!)
返却期限までよく聞いた。楽器の音色を聞き分けることも出来なかった
初心者ではあったはずだが「コンフォタブリー・ナム」の陶酔感などは
初心者にも分かった。とは言っても個人的にはクオリティの高さを認めてながらも
D面の後半「ウェイティング・フォア・ザ・ワームズ」あたりからは
一線を越えてしまっていて聞くのが辛い一作となっている。

「アナザー・ブリック~」はコンパクトな曲調とキャッチーな子供たちのコーラスによる
不気味なサビがヒット・シングルとしての要素を持ち合わせている曲。
雑誌「レコード・コレクターズ 2002年 01月号」で音楽評論家の赤岩和美氏が
この曲とイーグルの「呪われた夜」との類似性を指摘している。
どちらもロック・バンドがディスコ・ビートを上手に取り入れたのではなく
ディスコに挑戦したらディスコとは非なるものが出来上がり、
だからこそギリギリでロックっぽいのではないだろうか。
この曲は学園ホラー『パラサイト』のサントラではグランジ/オルタナ連合軍というべき
Class of '99(ボーカル:レイン・ステイリー/アリス・イン・チェインズ、
ギター:トム・モレロ/レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、
ドラムス:スティヴーン・パーキンス/ジェーンズ・アディクションら)
がよりダークなカバーをしている。さらにはコーンもカバー。
他のカバーとしてはEric Prydz Vs Floyd名義の「Proper Education」
がある
がこれはあまり芸がない、これなら「コンフォタブリー・ナム」を
カバーしたシザー・シスターズ
のほうが面白い。

このアルバムは監督アラン・パーカー、主演ボブ・ゲルドフで映像化されている。
アニメーションが大きくフィーチャーした映画版は英語がよく分からない日本人にとっては
アルバムで聞くよりしんどい作品で、いやーな感覚がたっぷりと味わえる。
TheWall_DVD

『ザ・ウォール』とはいかなるアルバムであるか、アルバムのアイディアは
ウォーターズが勝手に騒ぐ一部のファンに対して唾を吐いてしまったことで
感じた「壁」を具体化したものといわれている。
自己流に解釈すればコミュニケーションについての話だと思っている。
他人との壁は誰も感じる問題であり、それを越えることになしに
他人と交流はできない。『ザ・ウォール』が時代に求められているとしたら、
他人とのコミュニケーションが難しい時代ということなのかもしれない。

最近の映画でピンク・フロイドな場面があったといえば、
バターシー発電所で豚を飛ばした『トゥモロー・ワールド』だが、
Animals
『ザ・ウォール』を感じる映画としてはキリアン・マーフィ出演の
『28日後...』をあげておこう。直接的に、『ザ・ウォール』を感じるわけではないが
C面の冒頭「ヘイ・ユウ」「イズ・ゼア・エニバディ・アウト・ゼア」「ノウバディ・ホーム」
等ののテイストを感じるのは自分だけだろうか?
28DaysLater

「ディパーテッド」感想
「イカとクジラ」感想

テーマ:プログレ - ジャンル:音楽

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