『ノーカントリー』を試写会で観賞
2008 / 03 / 05 ( Wed )
ノーカントリー/NO COUNTRY FOR OLD MEN 
2008/03/15公開 公式:http://www.nocountry.jp/
ノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディション
DVD2008/08/08発売 

去年のベスト10を見ると女性映画といえるような映画が多くて自分でもびっくりしています。と言っても下位の方で『エンジェル』と『ウェイトレス』を入れたあたりで気付いていました。男性映画と言えるのは『ディパーテッド』、『アポカリプト』くらいです。『グラインドハウス』も主人公は女性ですし、男らしい映画が見たいと思っているところに見たのがこのアカデミー賞を受賞したばかりの『ノーカントリー』です。

オープニングはテキサスの風景、これがあまり美しい映像ではないと感じてしまいました。同じロジャー・ディーキンスが撮った『ジェシー・ジェームズの暗殺』の独特な映像や、予告で見た『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の映像と比べてもインパクトはありませんでした。さらにはルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)が死体の山に出くわす場面で聞こえてくるハエの音がやや遅れて聞こえてことにもやや違和感がありました。それはこの映画が出来が悪いと言うよりは自然な感じを出していたという方が近いのかもしれません。

事前に原作(『血と暴力の国』)を読んでいました。中心人物3人はそれぞれに強く、優れた人間であると同時にどこか弱いところや抜けたところがあるのが面白いのです。映画ではエド・トム・ベル保安官(トミー・リー・ジョーンズ)が老いぼれながらも優秀と言うのがやや分かりにくいかもしれません。終盤は原作と比べると少し整理されていますが、映画のまとめ方としては悪くありません。本編はベルで終わるのですが、小説を読んでいるときには終わりが近づけば気付きますし、毎章ごとに彼のモノローグがあるのであの終わり方でも不自然な感じはしませんが、映画ではやや唐突な感じもします。

この事件の引き金を引くことになるモスはベトナム帰りだけあってサバイバル術にも長けています。ジョシュ・ブローリンは『プラネット・テラー』、『アメリカン・ギャングスター』と、このところおいしい役が続きます。一番話題になっているのがアントン・シガー(ハビエル・バルデム)ですが、ふつう殺し屋といえば後で出てくるウッディ・ハレルソンのような冷たい感じのする役者を起用すると思うのですが、ここでは濃い顔のハビエル・バルデムが変な顔で登場するのが笑えます。それも感情を廃して自分のルールで物事を決め、出会った人々を次々に殺してゆく姿は悪魔か殺人機械のようです。そんな彼でも肉体は人間であることを示すシーンが面白いです。他のキャストで気になったのはモスの妻を演じるケリー・マクドナルドです。悪くないのですがなにも30歳過ぎのイギリス人女優をあえて起用しなくてもアメリカのヤンキー娘で十分ではと思いました。

画として面白いのは二人の人物がある場所で同じ仕草をするところ、さらには自ら傷の治療をする場面が強い男っぽくて印象に残りました。物語としてはシガーの印象が強すぎて、原題の意味が分かりにくくなっているかもしれない点が気になりました。モスがベトナム帰りということもあって年代は1980年にかっちりと設定されていますが、タイトルにある「この国は老人にはつらい」というのがいつの時代にもあった老人の嘆きなのか、あるいはこの時代にアメリカの何かが大きく変わってしまったのか?この映画(小説)では暴力や麻薬によって麻痺した社会になってしまったと嘆いているわけですが、『エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?』、『幸せのちから』などに描かれている産業構造の変化等を合わせて考えると今の時代につながるものが見えてくるのではないでしょうか。

テーマ:☆試写会☆ - ジャンル:映画

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