『つぐない』を試写会で観賞
2008 / 04 / 03 ( Thu )
つぐない/Atonement
2008/04/12公開 公式:http://www.tsugunai.com/ 
つぐない
DVD 2008/09/26発売

『プライドと偏見』につづくジョー・ライト監督とキーラ・ナイトレイの組み合わせによる映画、原作はイアン・マキューアンの『贖罪』です。『ノーカントリー』の原作『血と暴力の国』が映画原作にちょうどいい長さと内容であるのと比較して、『贖罪』の映画化に一苦労しそうなことは原作を読んだ人なら知っているでしょう。脚本家は印象に残るセリフ等のポイントをうまく整理しているのか原作のテイストを失わずに2時間に収めています(ラストは映像独自の趣向と思いながらも、もう少し原作寄りでもと思ってしまいます)。話の全体を年老いたブライオニーに語らせるなどの反則技を使わずに、ブライオニーを3人の女優に演じさせて時世を表しているのは好感が持てます(ブライオニーが成人したときにあった回想は蛇足気味)。なにやら成人したブライオニー役のロモーラ・ガライの評判が悪という声も聞きますが、彼女のことは『エンジェル』で見ていたので、「あー、ロモーラ・ガライが出てきたなあ」としか思いませんでした。姉のセシーリアを演じたキーラ・ナイトレイはブライオニー役をオファーされたのに対して、自分はセシーリアをやりたいと監督を説得したそうです(ブライオニーを演じていたら成人した彼女のパートが伸びたりして)。ちなみにこの映画の主人公はブライオニーですが、少女時代を演じたシアーシャ・ローナンは前半で退場するので主演ではありません。ということでセシーリアは主役ではありませんが、彼女は物語では確かに主役です(ややこしいですが、ネタバレ回避のためにこう表現します)。

映像としては中盤に長回しがあります。『プライドと偏見』でもやっていたのでジョー・ライトが好きなのでしょう。こうしたオーソドックスな面によって監督は古い感性の持ち主と思われてしまう可能性もあるでしょうが、きちんと撮っていますし監督の力量も分かります。ここでの対象は戦闘そのものではなく、休止中の戦争の一コマになっています。戦闘中ではないという点では日常ですが、その中に戦争という非日常を切り取ってみせるのは面白いと思いました。

原作の前半はとても読みづらくて、どこへ話が向かうか分かりにくいのですが、同じ出来事を別角度から語られるいわゆる羅生門的手法が取られています。厳密に言うと違うのですが、映像化に際しても羅生門的と言うふれこみだった『ナントカ・ポイント』と違って同じ場面の再現をくどくなることなく処理していてセンスの良さを感じさせます。

惜しいのはブライオニー以外の登場人物の描き方が薄い点です。物語の構造を考えるとある程度は仕方ないのですが、例えばセシーリアが看護婦を目指す切っ掛けをちらりと描いてくれたら説得力が増したのではないのでしょうか。ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)がセシーリアの父親から援助を受けて大学に進学し、それを引け目を感じていることは分かりますが、勉強家にはあまり見えないような気がしました。『プライドと偏見』では5人姉妹の細かい描写があったと思うのですが、ここではそこまでではありません(そういえば母親はこちらもブレンダ・ブレシンですが、影は薄いです)。

俳優についてですが、キーラ・ナイトレイは髪型がおばさんくさいなどあまり輝いていないように思います。ちょうど時期的には劇ヤセが話題になったころでしょうか、痩せているのも気になりました。ただ戦時中の女性としてはそれでいいのかもしれません。ジェームズ・マカヴォイは文科系の男が無理して戦争にいった感じがよく出ていました。映画として一番力が入れられていたのは間違いなく少女時代のブライオニーを演じたシアーシャ・ローナンです。基本的には生意気な性格ですが、その中で少女ならでは純粋さと、それに反する残酷さを行ったり来たりする不安定な様が絶妙です。彼女の思い込みが2人(いや3人)を悲劇に巻き込みのです。先に触れたようにラストが小説とはやや違うのでブライオニーのつぐないがあれで完結したのかはやや疑問ですが、ヴァネッサ・レッドグレイヴとアンソニー・ミンゲラの場面は、先日彼が亡くなったことで監督が考えていないような新たな意味を持ったのかのように感じられてしんみりとしてしまいました。

アカデミー賞を受賞した音楽は『プライドと偏見』から引き続きダリオ・マリアネッリ、ピアノはジャン=イヴ・ティボーデです。『プライドと偏見』では登場人物がピアノを弾くシーンもあり、その穏やかな音色が印象的でしたが、ここではさらに一歩踏み込んで、登場人物たちの心情を表します。つまり感情が高ぶるシーンでは音も大きくなるのですが、これにはややうるさいと感じる人もいるかもしれません(個人的にはギリギリOKです)。しかしピアノと同じくらいに印象的なのがタイプライターの音で、こちらの方がピアノの音より印象に残るという人も多いでしょう。これはナイス・アイディアです。サウンドトラック盤ではドビュッシーの「月の光」が最後に収録されていますが、実際には多分10と11の間あたりだと思います。

追記:ブレンダ・ブレッシンはロビーの母親つまり使用人ですね、何を勘違いしてるんだか(4/12)

テーマ:☆試写会☆ - ジャンル:映画

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