エミー・ロッサム『インサイド・アウト』全曲解説:前編
2008 / 04 / 15 ( Tue )
エミー・ロッサムのデビュー・アルバム『インサイド・アウト』に一番影響を与えたアルバムは
ダイドの『ノー・エンジェル』フル・フルの『ディテイルズ』ということになりそうだ。ダイドの
湿ったボーカルと音像、フル・フルの打ち込みアレンジに影響されたと思われる音が
随所に聞かれる。フル・フルはイモージェン・ヒープ、ガイ・シグスワースともに
活躍しているだけにぜひ再発してほしい。

「スロー・ミー・ダウン」エミーの声オンリーで構成された印象的な1曲。多重コーラス
ということで、エンヤやイモージェン・ヒープとの比較されがちだが、彼女たちはキーボード
奏者的発想の方が強いので違うと前に指摘した。日本で一人多重録音と言えば
山下達郎の専売特許だが、ポピュラー音楽ではビョークの『メダラ』が有名。
時代をさかのぼるとトッド・ラングレンの『ア・カペラ』というずばりな題名のアルバムもある。
ア・カペラは実験的な要素とコーラス/ドゥー・ワップの要素がある。ビョークは前者寄り、
トッド・ラングレンは後者寄り。20年近く差がある二枚なので同じことをしようとしても
テクノロジーの変化はかなりあるはずだ。
「インサイド・アウト」これまたボーカルから入る2曲目はぐっとテンポを落として歌われる。
この曲の中盤の"ダラッダラー"コーラスで連想されるのは『トゥ・ザ・フェイスフル・
ディパーテッド』の頃のザ・クランベリーズ。ボーカル、ドロレス・オリオーダンの
特徴と言えば(何と呼んだからいいかは知らないが)途中で声をひっくり返す歌唱法だ。
シネイド・オコナーも一時期これを多用していたが、これがアイルランド特有なもの
なのかは不明。
「ステイ」幻想的な曲調にしっかりとタイトルが歌われる曲。この曲名を聞いて思い出したのは
リサ・ローブだが、曲は別に似ていない。このわざと声を湿らせたような感じはダイドの
「ヒア・ウィズ・ミー」が近い。声にあわせたかのように音全体に靄がかかったような
サウンドも同様。
「フォーリング」アルバムの中でもとくにポップな曲。これははフル・フルの「レット・ゴー」が
下敷きだろうか、リズム・アレンジはフル・フルの方がシャープなのでかっこいいが、
この位のほうが親しみやすい
かもしれない。
「グレート・ディヴァイン」アルバム前半のハイライト。アルバムの情報がまだ少ない頃に
この「グレート・ディヴァイン」という言葉を知ったときはまだこれが曲名なのか、
なんらかの影響を彼女に与えた本や映画なのか、それすら分からなかった。
そんなときに頭に浮かんだのはサラ・マクラクランの「ポゼッション」と
ザ・バンドの「ロッキー越えて」の原題"Across the Great Divide"だった。
やがてこれが曲名で映画「歌追い人」にインスパイアされた曲だと知り、
いわゆるアメリカン・ルーツ音楽に近いものになるのではないかと予想していたが
まるで違う静かな曲となっていた。それはザ・バンドの音とギタリスト、
ロビー・ロバートソンのソロ・アルバムの音との落差にも似ていた。
そのアルバムを手掛けたのはダニエル・ラノワで、彼はU2の『ヨシュア・トゥリー』や
ピーター・ガブリエルの『So』の(共同)プロデューサーとして知られる。
そしてこれ以降90年代にかけてはルーツ音楽の傑作をいくつも手掛けていった。
その中の一枚に映画『歌追い人』のサウンドトラックにも参加したエミルー・ハリスの
『レッキング・ボール』もある。もしサントラでエミーとデュエットしたのが
ドリー・パートンでなくエミルー・ハリスだったら、この曲を別のアレンジが
されただろう(ちなみにここであげたアルバムの多くにはピーター・ガブリエルの
「レッド・レイン」的な楽曲が収録されている)。
23 : 00 : 48 | デビュー・アルバム『Inside Out』 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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