『旅するジーンズと19歳の旅立ち』その6 感想
2008 / 08 / 10 ( Sun )
旅するジーンズと19歳の旅立ち/The Sisterhood of the Traveling Pants 2
2008/08/06公開 公式:http://www.jeans2-movie.jp
旅するジーンズと19歳の旅立ち 特別版
DVD 2009/02/11発売

以前にも指摘したようにこの映画に出演した4人(アンバー・タンブリン、アメリカ・フェラーラ、ブレイク・ライブリー、アレクシス・ブレーデル、以下イニシャルで略)の代表作は『Joan of Arcadia』『アグリー・ベティ』『Gossip Girl』『ギルモア・ガールズ』といったテレビ・ドラマなわけで、それも価値観で言えばエミー賞よりはティーン・チョイス・アワード。実際にここ3年でAB、AF、BLと連続で受賞し、ATもノミネート経験がある。とは言え一番出世したのは意外にも前作『旅するジーンズと16歳の夏』を見る限り4番手に見えたAFで、エミー賞他の主要な賞を受賞した。この続編製作が発表されたのはAFがゴールデン・グローブ等を受賞していたころで、彼女の出世がゴー・サインを出す切っ掛けになったことは容易に想像がつく。一方今作公開時に一気に注目を集めることになったBL、彼女の『Gossip Girl』出演が発表されたのは続編製作発表の約一ヵ月後、このドラマが話題になることを見込んでの見切り発車の面もあったのかもしれない。

前作の感想にも書いたが、このシリーズは基本的にレイプもいじめも出てこない清く正しい少女の物語なので、ぬるいと思う人もいるだろう。4人とも大学に進学できる家庭の子なのだ。それが悪いわけでもない、ちなみに今作では性についてはやや前作よりも踏み込んだ内容になっている。本作の原作となるのは『トラベリング・パンツ』シリーズの4作目『フォーエバー』なので、間の2作は基本的には省略されるが、ブリジットが祖母を訪れる話やカーメンの母の出産などは今作に入っている。また内気なリーナとは対称的にイケイケな妹のエフィは前作では登場しなかったが今作には出てくる。恋愛関係に関して言えばこの2年間を省略しているのでティビーとブライアンの付かず離れず関係はいいとして。リーナとコスタスの微妙な関係に、今作で初登場するレオが入り込んでくるのは、リーナの心の移り変わりが早いと感じなくもない(彼女のじっくり考えてから物事を決め、こうと決めたら頑固な姿は前作ではおじいちゃんをの説得、原作では美大進学のエピソードによく現れている)。

さて今作で一番注目していたのは、劇の裏方として夏休みの舞台に参加することになったカーメンが主役に抜擢され舞台を演じるというストーリーが『アグリー・ベティ』で成功したAF本人とダブることだったのだが、カーメンが役者として開眼する瞬間がはっきりと描かれなかったのは少し残念(一人を目立てさせない配慮があったのかもしれない)。また原作にあった彼女がルームメイトに言った捨て台詞は読んでいる分にはいいが映像にしたらきつすぎるだろうから省いて正解だった。そのルームメイトを演じたのは『P2』のレイチェル・ニコルズ。カーメンのことを自分より下に見ている笑顔が白々しいタイプの女性だが、それを嫌みなく演じていて好感が持てた。『Star Trek』『G.I. Joe: Rise of Cobra』というアクション系の作品が控えている彼女だがコメディももっと見てみたい(まあ『新 Mr.ダマー ハリーとロイド、コンビ結成!』なんてのもあるようですが)。

そしてブリジットに関するプロットは原作と比べてかなり変化があって、原作でトルコの発掘現場にいる教授は若い男性、今作ではショーレ・アグダシュルーが演じる女性教授となっている。原作では恋人がいるのにこの男性教授といい感じになる。それを引き戻すのは彼の家族の存在なのだが、映画では女性教授の家族の存在がブリジットに自分の家族のことを思い出させる切っ掛けになっている。ところでこの男女の入れ替えはどんな意味があるのかと考えてみると、この映画が女性映画であることを思い出す(監督からプロデューサー、音楽まで主要スタッフが女性)。この女性教授は戦争も経験していると言うことになっているので、演じているショーレ・アグダシュルー本人が革命によってイランを離れたことが反映されているのだろう。4人の中でブリジットだけに男を登場させなかったのは前作の彼女がそれにのめり込むようなタイプと誤解されたとの思いがあったのかもしれない。つまり彼女のパートだけ自殺してしまった母親にどう向かっていくかという前作の宿題をこなしている。自分の家族のことを考えるようになったブリジットはトルコから帰国してすぐに長い間会っていなかった祖母の家に転がり込む、これも原作では他の巻にあるエピソードで(と言うよりはその巻の重要な柱)、そこでは他人のふりをして祖母に会いに行ったが、映画では向こうがすぐに気付く。祖母を演じるのはブライス・ダナー、自殺してしまったブリジットの母親の母親らしく(?)やや神経質そうな女性をうまく演じている。母親の自殺に対して必要以上に責任を感じるブリジットの肩の荷を降ろしてやるのが祖母の役目だ。

4人の演技をまとめると、カーメンの変化をうまく捉えていないこともあって、やはり一番うまいのはABだと感じだ。セリフよりもちょっとした仕草で見せる演技が雄弁に語る。今作での微妙な三角関係などは一歩間違えれば、嫌な女に見えてしまうところをうまく処理したのは彼女ならではだ。ATは悩みを抱える姿が、よく似合う。BL自体の輝きは前作とさほど変わりない、その後、ふさわしい作品に恵まれるまでに時間がかかっただけなのだ。

映画としてみると前作よりややテンポが悪く感じられる。もちろんそれぞれが大学に通うようになって連絡は取りにくくなり、離れ離れでいることが当たり前の状況となったことも関係している。単純なことだが、駅や空港の描写や移動中の姿が少ないと、遠く距離の離れたところから苦労して会いに来たという感じがしない。ギリシャの青い海と白い町並みという風景も前作と同じで新鮮に感じなかった。

ストーリーにおけるジーンズの比重を小さくするのラストに向けて意味があることなので仕方ないし、全体としてはとくに悪いわけではないが、前作におけるベイリーやブリジットの母親のように感情移入しやすい話が今作にはないので求心力にはやや欠ける。前作のテーマが喪失と再生であるとしたら今作は再生と創造ではないだろうか。原作2、3作目から使われたいくつかのエピソードがそう感じさせる。まあもちろん最後は4人の友情に決まっているわけだが。
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コメント
--前作のヒットを受けて…--

こんにちは。

このシリーズって原作がそんなにあるんですか?
アメリカでは中ヒットといった感じのようですが、
日本ではどうなんだろう。
前作がよかっただけに
そのイメージを大切にしたい人たちの反応が気になります。
by: えい * 2008/08/15 10:57 * URL [ 編集 ] | page top
--2、3巻あり--

間に2巻と3巻があります。
原作との比較はやりすぎると危険なので気をつけたのですが、
ブリジットが祖母の家に行くのはその巻の重要なエピソードなのであえて言及しました。



by: JK * 2008/08/17 22:23 * URL [ 編集 ] | page top
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[2008/08/13 09:13] ラムの大通り
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