『チェ 28歳の革命』『チェ 39歳 別れの手紙』を試写会で観賞
2008 / 12 / 23 ( Tue )
『チェ 28歳の革命』2009/01/10公開。『チェ 39歳 別れの手紙』2009/01/31公開
公式:http://che.gyao.jp/
チェ ダブルパック [DVD]
DVD 2009/06/12発売

スティーヴン・ソダーバーグ監督、主演ベニチオ・デル・トロによるチェ・ゲバラに関する映画です。ゲバラ映画といえば少し前に「後にゲバラになる男による南米旅行」の『モーターサイクル・ダイアリーズ』がありました。ウォルター・サレス監督ということもあってか、ボクの頭の中ではなぜか主演はロドリゴ・サントロと勘違いしていたのですが、実際にはガエル・ガルシア・ベルナルでした(ちなみにロドリゴ・サントロはこの映画ではラウル・カストロ現国家評議会議長役で登場します)。二本ともに2時間以上あるこの二部作ですが、今回運のいいことにジャパン・プレミアに当選し、二本続けて見ることができましたがさすがに帰宅時間は24時過ぎでした。

それではまず舞台挨拶の様子から、ベニチオ・デル・トロは会場の女性ファンがアクションを起こすとすぐさま反応するなどサービス精神旺盛、その一方で映画のほうは監督に聞いてくれとソダーバーグを立てていました。そしてそのソダーバーグはちょっと気難しそうなふりをした後で丁寧に映画について語っていて、この二人が信頼し合っている様子がうかがえました。ゲストはデル・トロファンの道端ジェシカとフィデル・カストロと親交もあるというアントニオ猪木が葉巻をくわえて登場。この後の4時間上映を意識してかイベントしては短めで、最後は「1,2,3 チェ」でしめてくれました。

『チェ 28歳の革命』Che: Part One /Che, El Argentino
さて『オーシャンズ』シリーズはともかくとして『ソラリス』『さらば、ベルリン』とまったくつまらない作品が続いたスティーヴン・ソダーバーグは現在絶不調だと言うのが今のボクの立場です。『28歳の革命』はメキシコからキューバに乗り込もうとする船の中から始まり、キューバ革命の様子が描かれます。それと平行してゲバラによる国連での演説等が白黒で描かれます(なにやらゲバラに付きまとう工作員らしき人がいるように感じるのは気のせいでしょうか)。これによってゲリラとしてのゲバラと演説がうまいゲバラが提示されます。3時間程度の作品にするならこれらに加えて時間軸をいじるなどの映画技法を駆使して複雑な作品にし、そうしたことから得られる何かを表現したのかもしれませんが、この二本では音楽も抑え目なドキュメンタリータッチで通しています。これをどう評価するかは人それぞれでしょう。両方ともに娯楽性はあまりないのですが『別れの手紙』の手紙と比べるとよく知った顔のフィデル・カストロや先にあげたロドリゴ・サントロや後に妻となるアレイダ・マルチ役のカタリーナ・サンディノ・モレノ(ちなみに二本の映画全体を通して女っ気はあまりありません)などお馴染みの役者が出ている『28歳の革命』の方が親しみやすいと思いました。また監督が革命をドラマチックに盛り上がるという方法をとらなかったことで演説を除いてゲバラのカリスマ性の源泉が何であるかを明確にはしていません。それは今やファッション・アイコンにもなってしまったチェ・ゲバラを必要以上に祭り上げないようにするためなのでしょう。あるいは政治的にキューバに厳しい立場をとる人たちに対してのエクスキューズを狙っている可能性もあります。

オープニングの船上(1)での会話では「キューバに上陸するころには何人生き残っているか」というやり取りがあって、12人しか生き残らないのですが、その過程は描かれていません。この映画はそういった省略が随所に見られます。市街戦のために教会を占拠する場面がこの手のものでは様子がじっくり描かれた唯一の場面だと思います。ある人が「妙案がある」と言うと、次の場面でそれが成功していたりします。この辺は厳しい殺人描写を避けたのでしょう。また内戦と言うこともあってか、誰がどちら側についているかは少し分かりにくくなっています。捕虜に対する扱いのなどを見るとこの時代にはまだ内戦や革命にロマンがあったということでしょうか(2)、現代はこうはいきません。また予算の関係でしょうか、空からの攻撃については爆撃の様子はあっても飛行機は映っていなかったように感じました。

ベニチオ・デル・トロに関しては個人的には国連演説のときが一番魅力的だったのですが、喘息に悩ませられながら戦う姿は演じるのが難しいだろうなと感じました。カタリーナ・サンディノ・モレノはやはり美人でした。

『チェ 39歳 別れの手紙』Che: Part Two /El Guerrillero
キューバを離れることになったチェ・ゲバラがフィデル・カストロに宛てた手紙が邦題になっている第二部です。コンゴを飛ばしてボリビアが舞台になっているのは、もちろんゲバラが死んだ土地であることとが重要なのでしょうが、同じラテン・アメリカを舞台にすることによってキューバとの比較ができると言うのもあると思います。もちろんゲバラが死ぬことは分かっているので見ていて辛いものがあります。キューバ編とは違い、ボリビアの反政府組織をまとめることが出来ない苛立ちなどが印象に残ります。スティーヴン・ソダーバーグはゲバラを悲劇の英雄としては描かず、あくまでも一人の戦士が歴史舞台から去る様子を淡々と描いているのは第一部と同じです。

俳優陣はカメオ的に記憶を失ったCIA諜報員でお馴染みのあの人が登場しますが、むしろこの映画を語るなら『グッド・シェパード』の人といったほうがいいかもしれません。第一部から続いて出てくる人物はすぐにいなくなるのでベニチオ・デル・トロ以外は知らない俳優ばかりになります。その分ゲバラの人間性に肉迫したと言う見方もできると思いますが、個人的にはこちらにこそ世界から見たゲバラの位置付けがあった方が良かったと思いました。

さすがに2作続けて見るとここの作品の印象は弱くなったり、混ざったりするので。この観賞方がベストとは言えないようです。

(1)正確には家から始まりその後に船です
(2)改めて見るとやや勘違いしたようです

テーマ:☆試写会☆ - ジャンル:映画

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コメント
--こんにちは。--

こんにちは。

ぼくは記憶のかなた、子どもの頃、
新聞だったかニュースだったかで、
ゲバラが表舞台から消えたことを
大騒ぎしていたのをかすかに覚えています。

今回、その記憶と
この映画が結びつき、
なんだか胸の奥がざわざわとした感じになりました。
そういう意味でも、
第二部の方が
ぼくには鮮烈でした。
by: えい * 2008/12/25 09:58 * URL [ 編集 ] | page top
--知ったきっかけ--

コメントありがとうございます

チェ・ゲバラを知ったきっかけは憶えていません
なにかかっこいいことを言えたら良いんですけどね。
by: JK * 2008/12/28 18:01 * URL [ 編集 ] | page top
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