『ウォッチメン』を試写会で観賞(原作も買えました)
2009 / 03 / 25 ( Wed )
ウォッチメン/Watchmen
ウォッチメン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
DVD 2009/09/11発売

2009/03/28公開 公式:http://watchmen-movie.jp/

原作グラフィック・ノベルがアメリカン・コミック史上最高傑作にして問題作、映画化が持ち上がってから10年以上、ビジュアル化不可能といったうたい文句に続き、今さらという感じでアメリカ公開前に権利問題の裁判まで起こるなど話題が一人歩きしているような『ウォッチメン』です。その強烈なビジュアルの一方で俳優はギャラの安い人を使っているなどとも言われていますが、なじみの人が何人かいます。まずは『オペラ座の怪人』のラウルことパトリック・ウィルソンがバットマン風ヒーローのナイトオウル、ウィルソンとは『リトル・チルドレン』で共演してその演技でアカデミー賞にノミネートされたジャッキー・アール・ヘイリーが顔のない男ロールシャッハ。テレビドラマを中心に活躍し『P.S. アイラヴユー』でおいしい役を演じていたジェフリー・ディーン・モーガンが冒頭で殺されるコメディアンと言う具合です。実は本編を見る直前まで勘違いしていたのですがカーラ・グギーノが出演すると聞いて、てっきり彼女がヒロインを演じていると思っていました。なにせストリッパーも娼婦も脱がない『シン・シティ』で観察官の彼女だけが脱いでいたのでその印象が強かったのです。実際にそのヒロイン、2代目シルク・スペクターを演じているのはマリン・アッカーマンで、グギーノは彼女の母親で初代を演じています。グギーノは現役時代をレトロな雰囲気で、今を演じる時は老けメイクをしています。

そのまま映像化すると5、6時間かかりそうだと言われている原作(読みたくても売り切れ中でした)ですが、未読者の感想としては難しすぎるところや哲学的になりそうなところはいい感じで削られていると思いました。舞台となっているのはニクソンが憲法を改正してまだ大統領をやっている1985年という設定です。以前は活躍していたヒーローたちの様子はボブ・ディランの「時代は変わる」にのって繰り広げられるオープニングの映像で表現されます。そして現代の時点でヒーロー活動が禁止されています(『Mr.インクレディブル』へ影響あり?)。そんな中で高齢になったコメディアンが殺され、不審に思ったロールシャッハがヒーローの命を狙う勢力があるのではないかと疑うことから物語は始まります(こちらは『HEROES/ヒーローズ』シーズン2へ影響あり?)。ここは探偵モノのテイストで渋く始まります。

面白いと思ったのはロールシャッハのかつての相棒ナイトオウル(2代目)です。彼は今や中年で元気がなく、あちらの方もだめなのですが、ロールシャッハに触発されてヒーロー活動を再開すると、あちらの方も復活するという描写は『リトル・チルドレン』でパトリック・ウィルソンが演じたキャラクターがフットボール・チームに入って昔を取り戻すのとほとんど同じです。某有名曲がバックで流れるこのときのセックス・シーンはここ最近で一番笑えたシーンの一つです。

物語はやがて二人の人物によって収斂されてゆきます。一人はかつての科学実験により肉体を失いその後に復活したDR.マンハッタン。復活後は核兵器に匹敵する存在としてアメリカの軍事政策にも大きく係わっただけでなく、時間や時空を越えた存在、つまり神に近くなっています。もう一人は世界一の天才オジマンディアス、ヒーロー活動停止後に彼は企業家として成功を収めています。この二人の対決は原作よりもさらりとしたものになっているのではないかと思います。それでもこの二人の対決と下した結論はいわゆる大国のエゴそのもので、傲慢であるとも言えます。一方で彼らが覆い隠そうとする秘密に対してそれを公表すべきだと主張するロールシャッハは、他国の意向を無視して自らの正義を押し通そうとするアメリカそのものに見えてしまいます。この原作を映画化するに当たって、時代設定を変えなかったことは賛否両論があるでしょうが、ある意味では潔いと思います。85年という設定はニクソンの存在やBGMに使用される80年代のヒット曲を別にすればさほど気になりません。確かに今のアメリカに通じる場面はあると思うのですが、20年近い空白を埋める作業はしていません。時代設定はそのままでいいとして今に通じる要素を追加されていても良かったと思いました。イラクやアフガニスタンに象徴されるような親米勢力が反米に転じる仕組みや複雑な経済システムの問題点の萌芽をどこかに織り込んでいるともっと今に通じる空気を感じる映画になったと思います。冷戦に対する恐怖だけでは物足りないのは現代の基本になったものが、良くも悪くも80年代に生まれたものが多いと思うからです。

『300<スリーハンドレッド>』が嫌いな方も少なくないでしょうが、ザック・スナイダー監督が作るビジュアルは面白いです。『300』全編これ「決めポーズ」の連続と書いたのですが、あれと比べればこちらの方がストーリーはありますし、無意味な暴力描写は少なめです。それでもロールシャッハ関連の暴力描写は必然性があるにしても、場面によってはややきついです。今作のビジュアルを表現するとするとは重そうな物体が細かく動き、その軌跡もばっちり見えるという感じでしょうか、こちらの方が『300』より好ましいです。変な言い方ですが『ウォッチメン』の後に『300』が作られたら監督の個性が分かりやすくなったと思いました。と言ってもグロとエロも健在です。エロ場面は少ないですが長めです。

(追記)原作本が増刷されたので買ってきました。さすがに原作の方が各キャラクターの色付けがはっきりとしていています。コメディアンが政府べったりなのは映画でも分かりますが、ロールシャッハが右翼寄りでそれゆえに孤立しているのがよくわかりました。逆にオジマンディアスは自分のフィギュアまで売り出して金儲けしているあたりがリベラル・インテリらしくて笑えます。ロールシャッハとマスクの下のウォルター・コバックスとの関係というか、精神科医との話はもう少しじっくり描いても良かったと思います。DR.マンハッタンとオジマンディアスが対決する場面はさほど多くなく、哲学的な場面はほとんどDR.マンハッタンが担当していました。あとシルク・スペクターの重そうな髪の動きは映画ならでの良さだと思います。

エッセンシャル・レナード・コーエン
エッセンシャル・レナード・コーエン

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