ここがヘンだよ『DRAGONBALL EVOLUTION』脚本と演出。高校生悟空とチチ編と演出の問題点:『DRAGONBALL EVOLUTION』考察その4
2009 / 04 / 13 ( Mon )
高校生悟空とチチの話だけでは足りないのでノベライズも持ち出して演出についても言及

ここがヘンだよ『DRAGONBALL EVOLUTION』脚本と演出。高校生悟空とチチ編と演出の問題点:『DRAGONBALL EVOLUTION』考察その4

『ドラゴンボール』を映画化にするにあたって原作のまま悟空が子供だと色々と面倒なので少し年齢を上げることは必ずしも間違っていない。中学生では中途半端なので(ジャスティン・チャットウィンはそこまで幼く見えないが)高校生にするのもいいだろう。しかし高校生にしためにありがちな学園物と大して変わらない設定となり、悟空をいじめられっ子にしてしまったのは失敗している。せめて学園生活とは距離を置く一匹狼にしないとだめだ。この設定がチチとの関係にも響いてくる。悟空がチチに密かに憧れているなんていうのは論外で、悟空は武道>チチでなければならいし、チチに関するパートはすべて削ったほうがいいくらいだ。チチと悟空の関係にしても武道によって細い糸でつながっているべきだろう。チチは無理やり悟飯に武道を教えてもらっていて、悟空は憧れの人であり、いつか勝負したいと思っていた程度で十分だ。

以前指摘したようにこの物語では悟飯に育てられた外見が西洋人の悟空と、外見はアジア人ながら人気者のチチという対比がなされているのは重要なのだが、それを生かすためにはチチの方から悟空へと歩み寄ってゆく必要がある。ところが映画ではチチに憧れる悟空という設定で、恥ずかしいほどの悟空の妄想シーンまである。良かったのは悟空がチチの家を訪れる口実が出来たことくらいだ。

ノベライズと言うのはあくまでも参考にしかならないが、比べてみると映画の状況説明不足と必要以上に早い展開が目立つ。中盤でヤムチャの罠にはまって穴に落ち、その後にヤムチャと一緒に旅することが決まった時にレーダーにドラゴンボールが反応し、ドリルで掘るとなぜか火口があり、ドラゴンボールがマグマの中にある。この場面はどういう地形なのかぜひ説明して欲しい(ノベライズでは穴のドラゴンボールと火口のドラゴンボールは別のものであるので、まだ筋が通っている)。

火口にあるドラゴンボールを取りに行くとピッコロが自らの血から作った生物(ノベライズではフーラムと呼ばれている)を使って、悟空たちを妨害する。この生物は体を切られても再生するが、それを知っている亀仙人は傷つけないでマグマの中に放り込むが、悟空はやっつけて数を増やしてからマグマに放り込む。死体を橋代わりに使うためだ。映画ではこれらがセリフであまり説明されることもなく悟空の動きのみで示され、なにをやっているかよく分からない。

映画全体としては演出にタメというものがなく、大きな出来事もさらりと過ぎてゆく。これはラストバトルにも言える。悟空がオオザルになって亀仙人を殺し、その後に心の声を聞いて人間の姿に戻り、ピッコロと再び対峙するが、カメハメ波を撃ってピッコロに勝つ。二人の戦いに攻防と言えるものはなく、単に人間に戻ってカメハメ波を放ったら勝っただけだ。ピッコロはオオザルが人間に戻って驚いているが、やられそうになってマンガ的に「まさか!」というセリフがあってもいいくらいだ(ノベライズでは如意棒などを使い、ピッコロとの戦いも一進一退がある)。

90分に満たない上映時間を考えればどうしてこんなに急ぐ必要があるのかは謎だ。例えば『ポセイドン』なら時間を短くして沈没と言う危機を擬似体験させる意味がある。ところがこの『DRAGONBALL EVOLUTION』は地球滅亡という大問題に対して局地的にちょこちょことやっているだけなのだ。ためがないので物語に山すら作れていない。これがティーン向けだから短くしようと考えるならばこどもをバカにしている話だ。



次回はオリジナル・サウンドトラックについて

エミー・ロッサム出演映画『DRAGONBALL EVOLUTION』2009年3月13日日本公開、2009年4月10日全米公開
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