『グラン・トリノ』を試写会で観賞
2009 / 04 / 20 ( Mon )
グラン・トリノ / Gran Torino
2009/04/25公開 公式:http://wwws.warnerbros.co.jp/grantorino/
グラン・トリノ [DVD]
DVD 2009/09/16発売

以前にウディ・アレンとクリント・イーストウッドはそろそろ老けすぎて役者として画面で見るのはしんどくなってきたと書いたことがあるのですが、イーストウッド最後の主演作と噂されるこの映画ではそこを強調しています。孫や近所の若者に怒り、こめかみをピクピクとさせ、わなわなとなる姿からツバ吐きまで絵に描いたような頑固じじいぶりです。この映画で興味深いのはそれをある種のギャグとして扱っている点です。前半はイーストウッドのセルフ・パロディとでもいえそうな笑えるパートの多さにびっくりするくらいです。また予告編に入っているエア発砲がうまく使われて、なるほどと思いました。もちろんタイトルのグラン・トリノ(主人公の過去を象徴するオールド・タイプの名車)もきちんと収まるところに収まります。

クリント・イーストウッド演じるウォルト・コワルスキーはフォードの元自動車工、映画は妻の葬式から始まります。孫たちは式の最中の態度は悪く、息子は地元を離れ日本車のセールスマンをやっているので、関係は悪いです。普段はトラックに乗っているので、グラン・トリノを出す場面があっても妻が死んで思い出に浸るために出してきたのかと思ったのですが、ここ数年は時おりグラン・トリノを磨いて、それを肴にビールをやるのを老後の楽しみにしているようで、孫が触ろうとすると怒ります。

朝鮮戦争にも参加し、日本車にも負けたと思っているコワルスキーは隣に越してきたモン族の一家を毛嫌いします。彼の中ではアジア人は国籍に関係なくよそ者なのです。彼の中ではとくに差別していると言う意識はなく、ふつうの感覚なのでしょう。街に流入してくるラテン系の住民にも嫌悪感を持ちます。だからこそ隣のモン族一家のタオ少年が愛車グラン・トリノを盗もうとした時には当然のように銃を持ち出します。しかしタオがモン族ギャングに唆されてやったことに気付きなどいくつかの出来事を経て、タオの一家と親しくなります。父親がいないタオと、子供たちが遠くに行っているコワルスキーは互いを補完するような擬似親子関係になり、コワルスキーは「タオはやれば出来る子」とばかりに一人前の男として育てようとします。これはコワルスキーとしては一線を越えた行為で、この後に良くないことが起こるのは映画のお約束です。

やがてタオの姉がモン族ギャングに乱暴されたときに、コワルスキーが選ぶ道は復讐か泣き寝入り、はたまた別の道かと思いながら見ているとやや意外な方向へ話が向かいます。意外と言ってもかつてのイーストウッド映画から考えると意外かも知れませんが、ここ数作を見ていればそうでもありません。原作付きの『ミスティック・リバー』と『ミリオンダラー・ベイビー』、歴史・実録物の『硫黄島』二部作に『チェンジリング』では描ききれなかったイーストウッドの思いというものがこの映画のラストにはあるように思います。しかし『レイチェルの結婚』のインテリ一家のひ弱さと比べると頑固保守じじいの力強さはどうでしょう、保守と言っても今の保守政治家とは違うので、こちらは絶滅危惧種なのでしょうね。

映画の性格上クリント・イーストウッド以外の俳優はほとんど無名ですが、行きつけの床屋さんを演じるのは『ゾディアック』で怪しい人物をジョン・キャロル・リンチ、ゾディアックは『ダーティハリー』のスコーピオのモデルとされているだけに因縁を感じます。少々気になったのはタオ兄弟の母親が英語を話せないことです。年齢は40代でしょうか移民してきた年代を考えれば話せても不思議はないと思いますし、英語が話せないのでコワルスキーとの変なコミュニケーションをする役割は祖母が担当します。夫を亡くしたことも考えると不自然です。エンディング・テーマを歌うのはイーストウッドが映画音楽だけを提供した『さよなら。いつかわかること』でも歌ったジェイミー・カラムですが、出だしの渋い声はイーストウッド本人でしょうか、確認することが出来ませんでした。

テーマ:☆試写会☆ - ジャンル:映画

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コメント
--こんにちは。--

こんにちは。

ぼくも「セルフパロディ」を感じました。
その分、これは『チェンジリング』に比べると、
観客を選ぶ作品ともいえるかもしれません。

でも「保守」の言葉を観て、
なるほど、その分これは
今年のアカデミー賞には敬遠されたのかななんて考えが
ちらり頭をかすめました。
by: えい * 2009/04/25 10:34 * URL [ 編集 ] | page top
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