『ザ・ストレイン』ギレルモ・デル・トロ、 チャック・ホーガンはトリロジーの1作目です
2009 / 10 / 07 ( Wed )
ザ・ストレイン (単行本(ソフトカバー))
2009/9/10発売
ザ・ストレイン (単行本(ソフトカバー)) ギレルモ・デル・トロ (著), チャック・ホーガン (著), 大森 望 (翻訳)

ギレルモ・デル・トロがチャック・ホーガンと書いた長編小説。アメリカでも今年発売されたばかりの小説がすぐに読めるのは喜ばしい。日本の発売元はパンデミック・サスペンスと宣伝しているが、『ヘルボーイ』『ブレイド2』のデル・トロなのでそれで終わるはずもなくモンスターが出てくる。外国の書評でその正体を知ってしまった僕のような人間もいると思うが、プロローグを読んだ大多数はV小説だと気付くだろう。

解説を読むと当初はテレビドラマの企画としてスタートしたがギャグを入れろと言われ、切れて引き上げたとある。どこまで本当かは分からないが、それを信じるとしたら当初の設定よりグロくなっていることになる。モンスターの形態はエイリアンを思い出させるし残酷描写もきちんとあるので、ホラー小説として引き込まれる。細かい点ではあるが、好きなのは肩コリがうまく使われているところと精神的に不安定な婦人が出てくるところ。

その一方で主人公イーフは疾病対策センターの科学者である。JFK空港に降り立った直後の飛行機が連絡を絶ち、応答もないためにイーフが調査のために乗り込むが、彼はそこで多数の死体とわずかな生存者と棺桶のような箱を目にするところから物語は始まる。ということで彼はマッドサイエンティストなモンスターハンターではなく(その役割は別の人が担当する)、まっとうな科学者のためにモンスターの存在を認めるまでに少し時間がかかる。

ギレルモ・デル・トロと共作するのはチャック・ホーガン、解説によると基本はデル・トロで味付けはホーガンだが、ネズミ駆除業者はホーガンのアイデアだという。なるほど探偵小説調のキャラクターだ。また各キャラクターのもったいぶった登場のしかたなどは彼の個性かもしれない。ちなみにホーガンの小説『強盗こそ、われらが宿命』はベン・アフレックが映画化している。

この事件のあった日にはちょうどニューヨークで日食があって、それが当て馬のように使われるのだが本筋はやはりモンスターだ。ようするにVのことなのだがヨーロッパのそれのように優雅な貴族の姿ではなく人間に襲い掛かる様子や、襲われた人間の行く末などはZに近い。最近見たジョシュ・ハートネットの映画にしてもそうなのだが、Vを現代に無理のない形で登場させるとZに近づくようだ。とはいえ古くからのV用武器も現代的にアレンジしたものを含めて出てくる。ちなみに中盤が長いのはこのZ化した被害者たちがその後に多くのページがさかれるからだ。

小説の舞台は2010年、松井もまだヤンキースにいる。当然911以降の空気も感じさせる。多くの人種が出てくるこの小説、ラテン系も多いがギレルモ・デル・トロ自身がメキシコ人ということもあってかメキシコ系からハイチ系まで幅が広い。ハイチ人の家政婦が信心深く聖水を持ち出すところは少し滑稽でもある。

一応三部作として書かれているので本作におけるラスボスは終盤近くにならないと登場しないし(過去は少し描かれる)、さらにその背後に潜む存在があるのはややずるいがまあいいだろう。ラストバトルは決戦の場所を移動させるのが面白い。意外な人物があちら側にさらわれるが、これも次作に持ち越しとなるがこの人の運命も気になる。

ギレルモ・デル・トロというと父親と対峙するというのが大きなテーマになっているものが多かったのだがここではやや違い、父親からの視点で子供を心配する場面が多い。イーフは離婚した元妻と息子の養育権を争っているのだ。そのほか色々な形の家族が登場する。これがこれからのデル・トロ映画にどう影響を与えるのか興味がある。

本作には公式HPがあるのだが、そこには映像もいくつかあるのだが、ネタバレが嫌いな人は本編を再現した映像にはモンスターの姿が写っているので見ないほうがいい。イーフ以外の重要な登場人物は彼の同僚ノーラ、イーフの息子ザック、そしてセトラキアンがいる。映像化したときの候補はあげると切がないがなぜか一番に浮かんだのはセトラキアンにジョン・ハートだった。『ヘルボーイ』のイメージがじゃまするならニック・ノルティはどうだろう。

http://www.thestraintrilogy.com/
http://www.hayakawa-online.co.jp/strain/
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