『パイレーツ・ロック』試写会。 『私の中のあなた』よりはすっきり
2009 / 10 / 14 ( Wed )
パイレーツ・ロック / The Boat That Rocked
2009/10/24公開 公式HP:http://www.pirates-rock.jp/
パイレーツ・ロック [DVD]
DVD:2010/03/10発売

リチャード・カーティス監督の『ラブ・アクチュアリー』に続く第二弾作品です。あの作品は『フォー・ウェディング』をはじめとするワーキング・タイトルでおなじみの脚本家の監督デビュー作としてはエピソードが多すぎて失敗した群像劇という感じがしました。中には好きなエピソードもあり、好きな俳優や好きになった俳優もいました。さてこの映画の予告を見たときには海賊ラジオと政府の役人との対決がメーンだと思っていたのですが、その予想は外れました。まあ今日海賊ラジオという単語を聞かないことからこのラジオ局の運命がどうなるかは誰にでもわかります。

当事のイギリスの放送局はBBCのみで、そのBBCも契約のために一日にレコードでかけられるポピュラー音楽の時間には制限があることによって(貴重な音源が残されていることでも知られているBBCライブはそれを回避するための抜け道でもありました)、外国からの電波や公海上からの海賊ラジオの需要が生まれたという成り立ちはオープニングのスーパーで説明されてしまいます。つまりこの時点で海賊ラジオは認知されていて、これを規制しようとする政府側の理由がお決まりの「やつらのやっていることは反社会的な行為だ」というものになっていて、どちらかというと政府側の描写はほぼギャグとして撮られています。対抗策も本当に有効なのは文字通り最後のだけですし、海賊ラジオ対政府の対決を期待していたのでその点はがっかりしました。そこを別にすれば、高校を退学し更正のために船に乗ることになるカール君を登場させて、周りのDJたちをさばくというやり方は脚本家兼監督らしいところでしょう。そうした構成が巧みとは思いませんが、大きなマイナスにもなっていないと思いました。

タイトルからも音楽映画を期待されるのでしょうが、流れる曲はエンドロールの1曲をのぞいてカバーではなくオリジナルです。中には権利の関係等で使用できないアーティストもいたのかもしれませんが、多くは有名なヒット曲です。ただ曲の背景などは説明されません。たとえば「ロンドンで一番話題の曲はこれだ」「BBCではこんな曲はかけないぜ」「知っている人は少ないだろうが、これはいい曲だ」という風な場面はあまりなく、むしろ登場人物の心情と歌詞と重ね合わせるような選曲が多かったです(女性キャラクターを曲名から拝借するのはちょっと…)。逆にいえば当事の音楽にあまり興味がなくても楽しめる内容になっていると思います。個人的にはザ・フーの「I Can See for Miles」がかかる場面が一番はまっていると思いました。ちなみにサントラのラストに80年代のヒット曲が収録されているので60、70年代がラジオの時代で80年代はビデオの時代という風になるのかと思っていたのですが、とくにそういうものはありませんでした。

登場するDJたちもどれもが個性的という感じはしませんでした。有名な俳優はアメリカ人DJザ・カウントを演じるフィリップ・シーモア・ホフマンだけといっていいと思いますし、この船に戻ってくる有名DJギャヴィン(リス・エヴァンス)も外見はなかなかですが映画のキャラクターとしてはそこまで個性的ではありません。結局DJたちの中で目立つのはデブとヒゲボーボーの二人で、かける曲の得意ジャンルで細かく設定されているというよりはキャラクター重視になっていました。気になったのはギャヴィンとビル・ナイ演じる海賊ラジオ局のオーナー(?)クエンティンのキャラが被っていたことです。クエンティンのようなかなりお年の理解者が当事いたのでしょうか。これは海賊ラジオの成り立ちの場面がないので分かりません。もしこのような人物がいないのであればこのキャラクターは監督が未来からの視点から入れて登場させた理解のある大人ということになります。そういえばカール君の母親(はっきりと顔を見せませんが英国人俳優好きであればすぐに分かるはずです)はスウィンギン・ロンドン時代の少女の10数年後といった雰囲気です。となると監督が80年代頃から60年代を回想したのがこの脚本のスタート地点でしょうか。60年代を忠実に再現したドラマというよりは、そうした構造のよくできたフィクションと見るのも面白いでしょう。

日本予告編に出てくるのでネタバレにならないと思いますが、船は沈没の危機に見舞われます。このタイタニック描写は、とくに水が襲うところがイマイチなのですが、そういうことを追求する映画でもないので気にならないと思います。ただ沈没しそうになってからが長いです。あの状況で流したい曲がたくさんあったのでしょうが、あれはありえないですね。

フィリップ・シーモア・ホフマンがイギリスの映画に出ると聞いて違和感があったのですが、役柄がアメリカ人ということで納得しました。いつもよりはちょっとわがままなキャラクターを演じています。あとは『ホット・ファズ』のニック・フロストがおいしい役、イケメンDJは『旅するジーンズと19歳の旅立ち』のトム・ウィズダム。ベネット家の三女からボンドガールまで出てくる女性は少ないものの美人ぞろい。注目はおバカなシック・ケヴィンを演じるトム・ブルック、ルックスといい芸風といい『リッジモント・ハイ』のショーン・ペンにそっくり。

なお前売りを買ってプレスシートを頂いたので色々と参考にしました。

(追記)この映画はモータウンをはじめとしたアメリカの黒人音楽がたくさんかかるのに、紹介されるときはいつも「全編ロックが~」となってしまうのかいかがなものかと。
ザ・フーの「I Can See for Miles」はイントロだけでしたね。歌も入っていると勘違いしました。

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コメント
--あの時代へのオマージュ--

こんにちは。

>登場人物の心情と歌詞と重ね合わせるような選曲

これはよかったですね。
実際には、あの映画の時代よりも後に作られた曲も使われていましたし、
これは一種の象徴的な映画ととらえた方がいいような気もします。
あの時代へのオマージュとしては、
かなりよくできていたのではないでしょうか?
by: えい * 2009/10/17 10:03 * URL [ 編集 ] | page top
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