『サン・パトリシオ』チーフタンズ feat.ライ・クーダー
2010 / 03 / 17 ( Wed )
『サン・パトリシオ』チーフタンズ feat.ライ・クーダー
San Patricio/The Chieftains feat. Ry Cooder

チーフタンズの1990年代の代表作といえば1995年の『ロング・ブラック・ヴェイル』と答えるが、最重要作はと聞かれれば1997年の『サンティアーゴ』をあげる。この『サンティアーゴ』はアンディ・アーヴァイン&ディヴィ・スピラーンの『イースト・ウィンド』(1992)とともにその後のヨーロッパ・ルーツ音楽のいい手本になったアルバムだと思う。『イースト・ウィンド』はアイルランド人によるバルカン音楽研究であったのに対して『サンティアーゴ』はガリシア地方を中心にしてスペイン文化圏を取り上げたものとなっていた。このアルバムはいくつかのパートに分けることが可能だが、それらのパートを拡大して1枚のアルバムにしても良さそうなくらいにアイディアの宝庫だった。その中にはカリフォルニアからメキシコ、キューバまでを視界に入れたアメリカ音楽に関するパートもあったが、アルバム全体の中での印象は薄い。そこにはライ・クーダーも参加していたので、本作はそのリベンジというか拡大版のようなものだ。ちなみにAMGで調べると『サンティアーゴ』は『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』より発売が早い。『サンティアーゴ』が『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』を生んだとはいわないが、あのアルバムが持つ広がりを考えると興味深い。

そんなチーフタンズもハープ奏者のデレク・ベルが死亡し、フィドル奏者のマーティン・フェイも引退したこともあって興味が遠のいていたのだが、これには飛びついた。メキシコ音楽に取り組むこのアルバムでチーフタンズが取り上げるのは、解説によると舞台は米墨戦争のカトリック系で編成された聖パトリック大隊(つまりこれがタイトルの『サン・パトリシオ』)、彼らが途中からメキシコに寝返ったことを題材にしている。戦争はメキシコの敗北に終わったのでこの部隊は処刑されたという。

アルバムはきっちりと分かれているわけではないが1~6、7~11、12~18と3つに分けるとしっくりきた。
以下箇条書き。緑字は曲名に併記されているゲスト、リストはmoreのところにあり

(1)リラ・ダウンズ。ハープの音が印象的と思ったらジャズ・ハーピストとして知られるエドマール・カスタネーダ、もっとも名前しか知らなかったし、ここでは過激なプレイではない。
(3)リンダ・ロンシュタットが歌う「ダニー・ボーイ」タイプのスロー・ソング。日本盤解説ではマヌエル・ポンセの曲とあるがクレジットではトラディショナルとなっている。
(4)ロス・フォルクロリスタス。マンドリンの絡みが素晴らしい。
(5)ロス・センソントレスチューバの動きがユーモラスで楽しい。
(6)『サンティアーゴ』で全面的にフィーチャーされたカルロス・ヌニェス(デビュー・アルバムはほんとうに好き)が息のあった演奏を聞かせる。

(7)ライ・クーダー。アルバムのもう一人の中心人物ライ、でも40秒あたりで声がよれている気がするのは気のせい?それともメキシコ風味?
(8)カルロス・ヌニェス二度目の登場。数曲で参加しているニール・マーティンのチェロが隠し味的に効いている。
(9)掛け合いによる裏声が曲にテンポを与え。チーフタンズ側のフィドルも冴える名演。
(10)L.A.ジュベニールバンダ・デ・ガイタ・デ・バターリョン・デ・サン・パトリシオ、つまりは聖パトリック大隊バグパイプ隊(?)による行進曲。(5)のロス・センソントレスがこれに加わり、俳優リーアム・ニーソンがナレーションをつける、アルバムの中心となる1曲。
(11)数年前に妹ENYA風に改名したMOYAことクラナドのモイヤ・ブレナンの歌が聞けるこの曲、パディ・モローニのイリアン・パイプの演奏はこの曲が一番いいと思う。

(12)チャベーラ・バルガス。じいさんのよれよれ声が聞ける曲。オレはこういうのは嫌いなのだと再確認。そういえば個人的には『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』がいまいちだし、アイルランドでもデジー・オハロランとかはだめだった。なんというか演奏にしまりがないように思えるのだ。似たようなタイプに見える。
(13)チャベーラ・バルガス。は悪くないと感じるのだから声に対する評価は難しい。
(14)ライ・クーダー。アレンジャーとして有名なヴァン・ダイク・パークスとの演奏で(15)の露払いをつるわけだが、もったいぶったような演奏が引っ掛かる。
(15)ロス・ティグレス・デル・ノルテ。その流れはこの曲でも続きのどかな歌はいいのだが、バックがもたっているように感じてしまう。ライとチーフタンズの相性は必ずしも良くないようだ。
(16)ロス・センソントレスの落ち着いたコーラスから次の曲へ
(17)リラ・ダウンズ。カルロス・ヌニェス入りも参加し演奏に勢いがあって良い。
(18)ラ・ネグラ・グラシアーナ。ハープを弾きながら歌うこちらのばあさまは良い。そして(19)のフィナーレへ。

というわけで一部チーフタンズと合わないと思われる曲もあるが(むしろ個人の好みかもしれない)全体的には悪くない。ラテンでもハープ(アルパ)は使われるわけだし、その辺はうまい。
1. ラ・イグアナ (with リラ・ダウンズ)
2. ラ・ゴロンドリーナ(つばめ) (with ロス・フォルクロリスタス)
3. ヤシ畑のそばで (with リンダ・ロンシュタット)
4. コンチェロスの踊り (with ロス・フォルクロリスタス)
5. エル・チーボ (with ロス・センソントレス)
6. サン・カンピオ (with カルロス・ヌニェス)
7. メキシコの砂 (with ライ・クーダー)
8. メキシコへの航海 (with カルロス・ヌニェス)
9. エル・カバリョ (with ロス・カンペーロス・デ・バージェス)
10. 戦いへの行進(リオグランデを横断して) (with バンダ・デ・ガイタ・デ・バターリョン・デ・サン・パトリシオ、リーアム・ニーソン、ロス・センソントレス、L.A.ジュベニール)
11. 死者へのララバイ (with モイヤ・ブレナン)
12. 月の光 (with チャベーラ・バルガス)
13. ビリャの交戦記録 (with マリアッチ・サンタ・フェ・デ・ヘスス・グスマン)
14. カンシオン・ミクステカ (イントロ) (with ライ・クーダー)
15. カンシオン・ミクステカ (with ロス・ティグレス・デル・ノルテ)
16. 黒い瞳 (with ロス・センソントレス)
17. エル・レランパゴ(稲妻) (with リラ・ダウンズ)
18. エル・パジャロ・ク(銅の鳥) (with ラ・ネグラ・グラシアーナ)
19. 終章 (with ロス・センソントレス、カルロス・ヌニェス、ロス・フォルクロリスタス、バンダ・デ・ガイタ・デ・バターリョン・デ・サン・パトリシオ、L.A.ジュベニール)
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