『プレシャス』試写会。 『ウディ・アレンの夢と犯罪』より脚本も勢いも上
2010 / 03 / 20 ( Sat )
プレシャス / Precious: Based on the Novel Push by Sapphire
2010/04/24公開 公式:http://www.precious-movie.net/
プレシャス [DVD]
DVD:2010/11/05発売

1987年、ニューヨーク・ハーレム。身体の大きい16歳のアフリカ系少女(ガボレイ・シディベ )が母親(モニーク)から虐待を受けるだけでなく、父親からはレイプされ2人目を妊娠中。それによってダブっている中学校(もちろん同級生からのいじめあり)を退学させられますが、そこから人生を再スタートさせます。この話を映画化したプロデューサーのリー・ダニエルズは偉いです(オプラ・ウィンフリーとタイラー・ペリーはサンダンス映画際後に名前を連ねたいわば応援団)。パワフルな物語なので勢いで見ることができますが、監督としてのリー・ダニエルズがうまくやっているとは感じませんでした。プレシャスが苦しくなって気を失いそうになると妄想シーンで(歌いこそしませんが)ミュージカルのようなキラキラとした世界に逃げ込むのは『ダンサー・イン・ザ・ダーク』や『シカゴ』で用いられた手法の変形なので目新しくありません。不幸の度合いでいけば『ダンサー・イン・ザ・ダーク』にも負けないのですが、人間不信が根底にあるようなラース・フォン・トリアーとは仕上がりがまったく違うのはいうまでもありません。

主人公のプレシャスを演じるのはオーディションで選ばれたガボレイ・シディベ、良い悪いを超えた反則技気味の存在感!でもこういう「一見集中力がなさそうな子はいるよなあ」と思わせます。食べるシーンはあることはありますが意外に控えめなのでゲップが出ることはありません。アカデミー賞で助演女優賞を獲得したモニークは鬼母です。トニー・スコットの『ドミノ』では役所かなにかの嫌味な受付役で出ていたと思いま。今回フリー・スクールの受付をするのはシェリー・シェパード、彼女もモニークと同じくスタンド・アップ・コメディアン出身ということで、やはり嫌味な受付係はこの手の人が最適(?)なのでしょう。この母親というのが生活保護や旦那を繋ぎとめておくためには娘を利用しまくります。父親の性的虐待を見逃すのもそのためなのです。何度かある母娘直接対決は「千秋楽結びの一番横綱対決」という風に嵐が起こるかと思ったら、そこまではないのですが迫力はあります。

この2人以外では音楽界から参加したマライア・キャリーとレニー・クラヴィッツが話題です。マライアは化粧を落としてソーシャル・ワーカーを演じます。ここでの演技は普段の派手な彼女とは違った姿を見せます。ここのでのポイントはこの役は母親よりの人物であることです。レニー・クラヴィッツは出産時の看護士役です。場を乱すことはありませんが、ややオーラが強いのが気になりました。しかしこの2人より注目されるべきなのはマライアより出番の多い(本ブログ的にはロビン・シック夫人であります)ポーラ・パットンでしょう。彼女はフリースクールの先生でプレシャスに勉強を教えます。そして先生はプレシャスが窮地に陥ったときにはより深く彼女に係わる決断をしなくてはならなくなります。プレシャスに自尊心を教えるのも彼女です。そういえばプレシャスがソーシャル・ワーカーに「あなたは何人?」と聞く場面があります。ポーラ・パットンを『デジャヴ』で見たときの印象はそれに近いものでした(それこそクレオール・ビューティーという感じでした)。彼女をニューヨークが舞台の物語で見るとまた違った感じがします。

最後はやはり母娘対決になります。母親の必死の言い訳場面はガボレイ・シディベだけでなくモニークも入魂の演技を見せます(もちろんモニークに味方をしたくはなりませんが)。母親が持ち出す奥の手というのがまた卑怯なのです。ほんとうにプレシャスを愛するのは誰なのか、プレシャスが愛するのは誰なのかが最後の見所となっています。考えてみれば母親対プレシャスの構図は生活保護対教育になっているのです。製作者がどちら寄りかは明らかです。

というわけで多少問題はありますがパワフルに見せる一本であることはたしかです。プレシャスの周りに男性の存在が薄いのは残念でした。先生がレズビアンというのも原作(未読です)と同じなのかもしれませんが、とってつけたような感じがしました。(2010/03/20)

テーマ:☆試写会☆ - ジャンル:映画

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コメント
--先生の設定--

こんばんは。

この監督は、もしかして
「悪いのは男権社会」、
そう言っているのではないかと思いながら見てたため、
先生がレズビアンという設定は、
ある意味、
なるほどなと思いました。
ちょっと図式的でもありますが…。
by: えい * 2010/03/27 21:43 * URL [ 編集 ] | page top
--追記--

公開が近づいたので追記のような形でコメントします。
原作者と監督について調べてから内容を思い出すと、
父親の存在を恐怖の存在というよりは避けて通ったような印象があります。
by: JK * 2010/04/06 23:11 * URL [ 編集 ] | page top
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