『カラフル』試写会。 対象年齢設定について『ベスト・キッド』旧作からの変化と比べるのも面白い
2010 / 08 / 12 ( Thu )
『カラフル』 2010/08/21公開 公式:http://colorful-movie.jp/
カラフル [DVD]
DVD:2011/04/20発売

『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』『河童のクゥと夏休み』原恵一監督の新作はサンライズ制作作品です。これまでお得意にしていた動きの面白さは封印して、もっと物語を語ることに重点が置かれています。もちろんこれは『河童のクゥと夏休み』と『カラフル』という原作主人公の年齢設定の違いもあると思います。

主人公は一度死んだところを天使プラプラに救われ、自殺した中学生小林真の身体に入ってしばらくの期間うまく過ごせば地獄に落ちずに輪廻のサイクルに戻れると告げられます。オープニングは懐かしのロトスコープらしき画像から始まります。それはあの世の入り口が持つもやもや感を表現するためのようです。ここは本来なら主人公のナレーションで始まるべきところを文字で説明しているのは主人公の前世がどんな人間であるかをぼかすためです。ずるい気もしますが仕方ないでしょう。

原監督らしいと思うのは『河童のクゥと夏休み』でもそうしていたように街の風景をうまく取り込んでいていて見ものとなっています。実際に現地に詳しければロケ地がどこか分かって面白いと思います。また中学校(ではなく病院でした)にある木はカラフルというタイトルのように色の変化を見せてくれます。

主人公が小林真の体に入ってからはプラプラからもらった最低限の真に関する知識で生活に困る様子が悲しくもコミカルに描かれます。(自殺しようとしたことは担任しか知らないので)学校での真は地味な存在のままですが、彼が美術部に所属していてそこが唯一の拠り所であることが分かります。真が残した書きかけの絵があり、それは馬が水中にいるもので映画『白い馬』を連想させます。この絵は馬が浮上しようとしているとも、自殺しようとしているとも取れるのです。

そして美術部の部室ではプラプラも知らなかった真を慕う女子部員佐野唱子(地味ネガネ女子で、お約束のネガネを外すという展開があります)がいて、自殺原因のひとつとなった好きな後輩桑原ひろかも部員ではないのに顔をよく見せます。主人公は唱子には僕は君が思うような人間じゃないと言い、ひろかが援助交際をしているという話を確かめるために彼女のことを尾行し、某有名映画ばりのことをします。こうして主人公は他人には自分が思っているのとは別の面があり、その逆の面もあると気付くのです。佐野唱子以上に主人公の視界に入ってなかった早乙女君というともだちもできて、真にとって親友になります。それは自分の家族についても同様で情けない父親、浮気をしていた母親、受験勉強のことしか頭にないと思っていた兄、それぞれが互いを思いやっていることを知ります。こうして主人公はプラプラが課した課題をクリアすることで自分の前の風景が変わってゆくような描写が見事です。その中でそれまでまった存在を気付かなかったような人物との交流が映画の中で大きなポイントになっています。最後には例の絵にあるものを足して主人公の今後をうまく表現していると思います。

声の出演は小林真が『河童のクゥ』でクゥを演じていた冨澤風斗、成長を感じます。真に絡んでくる女子中学生二人には宮崎あおい(佐野唱子)と南明奈(桑原ひろか)、原作のファンだと言う宮崎も悪くないのですが、はまり役は南のほうだと思います。天子プラプラを演じるのはまいける、関西弁の必然性があるのかはともかく少し高い声が天使の持つ永遠の少年性みたいなものを出しているのは良いと思いますが、やっぱりうるさい(笑)。両親は高橋克実と麻生久美子、かなり年の差がある二人ですが麻生の鼻声がおばちゃんっぽい(?)ので相性は悪くありませんが、二人ともイメージそのままの声です。『クレヨンしんちゃん』組は担任沢田先生と駄菓子屋にいたこどもでした。イメージ・ソングに「僕が僕であるために」、エンディングに「青空」のカバー、劇中のアンジェラ・アキまで使われるのはメジャー感があっていいのですが、使い方は平凡でもう少し考えてほしかったです。

テーマ:☆試写会☆ - ジャンル:映画

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コメント
--こんにちは。--

こんにちは。
お返事が遅くなってすみませんでした。

ある方のブログを拝見して、
なるほどと思ったのですが、
原監督の裏テーマ(?)には
“家族”があるということが分かりました。
この映画も、食事のシーンが
とても象徴的に使われていたことを
思い出しました。
いずれにしろ、これは今年の日本映画の大収穫。
ぼくのベストワンです。
by: えい * 2010/08/22 13:49 * URL [ 編集 ] | page top
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『カラフル』(2010年・原恵一監督版)
----これと同じタイトルの映画って、以前にもなかった? 確か、そのときは実写だったような…。 「うん。中原俊監督版だね。 それを、その年のぼくのベストワンでもある『河童のクゥと夏休み』を監督した原恵一が 手掛けるというんだから、 これは期待するなという方が無
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[2010/08/21 20:25] 映画のブログ
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