『ミレニアム2 火と戯れる女』試写会。 『カラフル』より原作からの取捨選択があまりうまくない
2010 / 09 / 05 ( Sun )
ミレニアム2 火と戯れる女 / Flickan som lekte med elden / The Girl Who Played with Fire
2010/09/11公開 公式:http://millennium.gaga.ne.jp/
ミレニアム2 火と戯れる女 [DVD]
DVD:2011/01/07発売

同じベストセラー・ミステリー原作でも『ダ・ヴィンチ・コード』よりずっと面白い映画になったミレニアム・シリーズの第一弾『ドラゴン・タトゥーの女』でしたが、この第二弾『火と戯れる女』は映画版『ダ・ヴィンチ・コード』並みの映画になってしまいました。原作はなかり長いので映像化するには削れるパートは削って再構成をしなければいけないわけです。ヒロインがリゾート地にいる箇所などは予想通りばっさりと削られていますがそれでもテンポは悪いのです。この辺は監督がニールス・アルデン・オプレヴからダニエル・アルフレッドソンに交代したことも理由でしょう。

この『火と戯れる女』は雑誌『ミレニアム』に持ち込まれた外国人売春の記事が原因で殺人が起こり、それにヒロインのリスベット・サランデルが巻き込まれ、彼女がその黒幕であるザラと対峙することになります。それらが大きな柱になっているのですが、全体としてはそれらのどこを強調したいのかをよく把握せずに起こることを淡々と消化するような描き方で、とくに前半にその傾向が強いです(映画全体としても悪役二人のどちらかの悪行を最初に出しておいて恐怖の種を蒔いておけばスリルが継続したと思います)。それによって女性への差別意識を糾弾するといった『ミレニアム』シリーズの根底に流れるものがかなり薄味になってしまっています。捜査現場での女性捜査官に対する扱いの悪さなどは無くなってもしかたないと思うのですが、リスベットがレズアンの悪魔崇拝バンドにいたなどという噂を警察が広めたという話などを入れることによって警察捜査のいい加減さや偏見の広まる早さなどが表現できていいと思うのです。

ミカエル・ブルムクヴィスト(ミカエル・ニクヴィスト)とリスベット・サランデル(ノオミ・ラパス)は健在です。リスベットの変装姿は笑えます。パート2の原作が面白いのはミカエルとリスベットがほとんど重なり合わない点で、とくに事件が起こってからはミカエルが容疑者となったリスベットのことを心配しながら、リスベットはコンピューターからミカエルを監視できる立場にあるという微妙な関係です。でも映像にしてしまうと二人の行動が交互に描かれてしまうので単にふつうの話になってしまい微妙な味は楽しめません。見ているほうとしてはリスベットが殺人事件に巻き込まれたといっても、パート2になってヒロインが急に悪い人間になるとも思えないわけですし、容疑者となった証拠にしても映像で見ると理由が丸分かりなのもつまらない一要因になっています。

またパート2のお楽しみとして金髪の巨人ことロナルド・ニーダーマンといういい意味でマンガ的なキャラクターがいてリスベットとの対決を含めた彼の活躍が楽しみなわけですが、これもあっさりとしているのも少々残念でした。元ボクサーのパオロ・ロベルト(本人役で出ているようです)との対決などはもっとうまくできたのではと思いました。でもリスベット最大の危機からの脱出のがっかり度に比べれば大したことはありません。このダラダラ路線よりはアクションが得意な監督を連れてきてこのアクションを軸に作ったほうがメリハリのあるものができたのではないでしょうか。

この物語の最大のポイントは事件の黒幕であるザラです。彼に関しては原作を読んでいたときからそう思っていたのですが、マクガフィン的な存在のほうが良かったと思うのです。といってもある理由から無理なのですが、映画では顔をぼやかすというような手法もありだったと思います。あとスウェーデン語の発音がちょっとした仕掛けになっているのが面白かったのですが、吹替えになったときにどうなるのかなと思いました。さあ『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』はどうなるのでしょう?
『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』を追加(2010年11月10日)



ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 / Luftslottet som sprangdes / The Girl Who Kicked the Hornet's Nest
ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 [DVD]
DVD:2011/02/04発売

基本的には「2」と同じように起きることを処理するので精一杯なのだが、「2」が省略なら「3」はアレンジだ。雑誌「ミレニアム」編集長エリカの引き抜きの話がないので、転職先のメール脅迫を内部ではなく敵対勢力からにしているのは良い。しかしそれをきっかけにセキュリティーを強化するあたりはよく描かれていない。その上一番派手なはずのレストランでの攻防はやはり盛り上がらない(スナイパー兄弟の片割れはどうしたのだ?)。「2」にも言えることだがどうやらこの2作はバイオレンスを控えめにしている。ちなみにミカエルと公安女刑事モニカの関係もない。

もう一つアレンジされているのが金髪の巨人だ。小説ではずっと出ないで急に出てくる反則技を使っているが、映画では本編と関係ないところで姿を見せて不気味な存在感をかもし出している。それにしては最後の扱いが良くないのが不満だ。

最大の改変は狂卓がないことか、ネット/コンピューター関係も大幅にカットさせられている。しかしそれよりも感じるのは小説「ミレニアム」シリーズが持っていた虐げられる女性とそれに反発する女性という構図を無視している(その中ではミカエルの姉アニカはがんばっている)。しかしリスベットを前面に出すというのは映画としては正しい。パンク姿で裁判に向かうリスベットの姿がとくに素晴らしいが、緊張が解けたときの演技も良い。小説版の女性キャラクター描写と、リスベットを光らせる映像、この二つを両立できる人が監督なら良かったと思う。しかし証拠改ざんは日本的にタイムリーだ。


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[2010/09/06 22:46] ★紅茶屋ロンド★
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[2010/10/26 21:18] soramove
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