ルーファス・ウェインライトのライヴをはじめて見る。2010年10月5日東京:JCBホール
2010 / 10 / 10 ( Sun )
オール・デイズ・アー・ナイツ:ソング・フォー・ルル_CD
オール・デイズ・アー・ナイツ:ソング・フォー・ルル/All Days Are Nights: Songs for Lulu

[ルーファス・ウェインライト2010年10月5日東京 JCBホール]
ルーファス・ウェインライトの存在は知っていたが興味を持ったのは前回来日公演が話題になったころ。その後にオペラ製作のために歌手活動は停止すると聞いていたが、思ったより短いブランクですんだ。ルーファスのことをシンガー・ソングライターというのは楽だ。ただ彼の音楽にはアメリカン・ロック以外の要素、母親(彼女の名前を知ったのはリチャード&リンダ・トンプソンのアルバムだった)からの影響もあるのだろうヨーロッパ的なもの、ロック以前のアメリカ・ポピュラー音楽やクラシック等の影響もある。個人的にはルーファスの場合はそうしたロック以外の要素がうまい具合に出ている部分が面白いと思っている。ただライブを見るまではシンガー・ソングライターと言っても気になる点があり、作曲家ルーファスは歌手ルーファスとっては手強い相手なのではないかと思っていた。つまり作曲家としての幅が歌手としての幅を超えていると感じるのだ。実際のコンサート、特に第一部ではその考えを強くする場面が何度かあったが、ピアノのノリが良くなるとしっくりきた。第二部では選曲の幅もあってそれは気にならなくなってきた。

今回の第一部はルーファス側の要望により歓声や拍手が禁じられていた。インタビュー(『ミュージック・マガジン』10月号『ストレンジ・デイズ』11月号)によるとクラシック・コンサートのスタイルにすることと、ミスったときに笑顔でごまかしてしまう癖を封印して厳しく音楽に向かい合うためと発言していた。音楽は楽しむものだとそれを否定する人もいるだろう。僕の考えはこうだ。観客はルーファスの意向をただ受け入れるだけではなく、いわば彼の共犯者となってその音楽空間を作り上げる。そのためには7時の開演時間までに着席する必要がある。7時という時間は観客全員が入場するということを考えて設定した時間ではないので開演時間後も観客は入ってくる。僕の席はアリーナ(といってもコンサートの性格上椅子が用意されている)の左のほうだったのでその度に光が入って気が散る。それを責める気はないが、ルーファスが衣装をきっちりと決めて服を引きずりながらしずしずとピアノ(そう、このコンサートはピアノ弾き語りなのだ)に向かう中、なんで席を捜す客の足音を聞かなければならないのか?と思ってしまった。当然それは一度や二度ではない。できることなら後ろに立たせたかった。

第一部は新作『オール・デイズ・アー・ナイツ:ソング・フォー・ルル』のピアノ弾き語りとビジュアルによって構成されると聞いていたが、映像は新作ジャケットの目玉が少し動く程度のもので、演奏とシンクロさせるような類のものではないようだ。黒をバックに目玉が動くのは見方によってはかなりグロい。「マーサ」ほか数曲でバックが白になっていた。第一部全体の感想としては重複するが歌手ルーファスにとってはしんどい曲もあった。聞き手としてはそこを補完するようなコーラスや楽器の音が入ったほうが良いと思う。ただルーファス本人がこのピアノ弾き語りというスタイルを経て、自分の得意なもの足りないものが何かであるか掴んだのなら、このチャレンジが無駄なものにはならないはずだ。ニュー・アルバムからの曲でも「ギヴ・ミー・ホワット・アイ・ウォント・アンド・ギヴ・イット・トゥ・ミー・ナウ! 」「ザ・ドリーム 」「ホワット・ウッド・アイ・エヴァー・ドゥ・ウィズ・ア・ローズ?」「ゼブロン」等の美しい瞬間がいくつもあったのも事実なのだ。

第二部のルーファスは衣装を東京で買ったもので揃え、リラックスした様子だ。服も照明も赤を中心としたものとなり、第一部での途中入場組は見えなかったのか(あるいは集中していたのかの)ルーファスの機嫌も良かった。第二部も引き続きピアノ弾き語りで、いわゆるベスト選曲。第一部がクラシックのリサイタルなら第二部は場末のバーといった雰囲気か?全体としては弾き語りで映えるような曲が多く楽しく聞けた。とくに「グレイ・ガーデンズ」「シガレッツ・アンド・チョコレート・ミルク」「リトル・シスター」「ゴーイング・トゥ・ア・タウン」等が聞けて良かった。『ウォント・1&2』の曲がやはりキーになっているようだ。

中盤にサウンドトラックに提供した曲コーナーがあって『ムーラン・ルージュ』からの曲と「ハレルヤ」をやった。そういえば持っていないサントラ曲をiTunesで買ったのだが、その2曲は持っていた。まあその他の曲はやりそうにもない曲なので仕方ない。終盤にはファミリー・コーナー、家族に関する話をして関連曲を歌った。亡くなった母親の曲は「Walking Song」だと家に帰って調べたら分かった。雑誌のインタビューで「Southern Boys」をやるかもと言っていたが両方ともにKate & Anna McGarrigleの78年のセカンド『Dancer With Bruised Knees』からの選曲なのでお気に入りなのだろう。

ピアノの弾き語りといい、変則の二部構成といい初ルーファス・ウェインライトとしてはふさわしくないように感じるがそこは一期一会だ。これがバンドなら代表曲を何度もやるのは飽きたとばかりにアレンジを変えたり、楽器編成を変えたりすることもある。それがそのバンド初体験で二度と見る機会もないとしたら「俺が見たいのはふつうのアレンジのあの曲なんだよ!」と思うだろうが、ソロ歌手は違う。バッキングがどうあれ、最後に残るのが歌であるという意味では不満はない。

テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

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