映画『オペラ座の怪人』ロックなファントム論
2010 / 12 / 20 ( Mon )
舞台版『オペラ座の怪人』ではシングルを歌ったスティーヴ・ハーリー、本番で歌ったマイケル・クロフォードのどちらもオペラ的に朗々と歌い上げる歌唱法ではない。ロック・オペラたるゆえんだ。ファントムの初期設定はワイルドな声だと容易に想像できる。ただしアンドリュー・ロイド=ウェバー(以下ALW)のロック観もけっこう怪しく、タイトル曲のベース・ラインがロックだろと言うような人であることは留意する必要がある。

舞台が長期公演となり、色々な国で上映されるようになるとファントムを演じる人数や公演数が増えると、ファントムの怪人の面より、歌の先生の面が表に出るようになる。だからこそALWは映画と言う一回きりのメディアを使ってロック寄りのファントムに戻そうとしたのだ。そうなるとワイルドそうに見えてきっちりとした歌い方をするヒュー・ジャックマン等はコンセプトから外れることになる。

映画のファントムに抜擢されたジェラルド・バトラーはALWやジョエル・シューマッカー監督が期待したほどにはうまく行かなかった。どこがいけなかったのか?彼の鼻声気味の声に対する声質への好き嫌いはともかくい、問題はきっちりと歌おうとしたことにある。音符を追うことに必死だったのだ。それではワイルドさを出すまでに至らない。つまりロックなファントムを期待して起用されたバトラーは、自分の歌唱によってそれを打ち出すことができなかった。

比較対象としてジョニー・デップの『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』をあげてみよう。デップは歌唱力がそれほどあるわけではないだけに歌い込むパートでは物足りないが、感情が高ぶるようなパートでは歌に勢いがあるし、ある程度音符を無視することによってロックっぽくなっている。これこそがバトラーに期待されたものではないだろうか。スティーヴン・ソンドハイムの特徴である詰め込みすぎの歌詞の字余り感がうまく作用したのかもしれない。またソンドハイムの特徴は難しさでもある。難曲を担当するBeggar Womanに本職のローラ・ミシェル・ケリーが起用されたことや、舞台から「Kiss Me」がカットされたことからもそれは分かる(若い恋人の歌なので外れても仕方ない面はある)。

以上主にジェラルド・バトラーへの不満を述べてきたが、エミー・ロッサムの歌に不満を感じる人もいるだろう。ただプロモーション来日時の「オール・アイ・アスク・オブ・ユー」のほうが映画/サウンドトラックより良かったと言いたい(個人的にはクリスティーヌを語るときに高音競争になるのは嫌いでもある)。
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