『ゲンスブールと女たち』。 『ザ・タウン』のリアリティ演出とは違い実在人物を茶化しながら本質に迫る
2011 / 05 / 15 ( Sun )
ゲンスブールと女たち / Gainsbourg (Vie heroique)
2011/05/21公開 公式HP:http://www.gainsbourg-movie.jp/
ゲンスブールと女たち(Blu-ray Disc)
Blu-ray: 2011年10月05日発売
セルジュ・ゲンスブールといえばフランスのマルチ・アーティストですが、僕はレコードすらさほど聞き込んでいません。それでもオムニバス『ゲンスブールを歌う女たち』などは好きですし、この映画を見る上で参考にもなります。もちろん数々の女性との恋愛や騒動などは知識として知っていました。

ジョアン・スファール監督がバンド・デシネの人なのでアニメーションも使われます。それよりも重要なのはセルジュ・ゲンスブールをカリカチュアライズした別人格が登場することです。本人よりも背が高く、鼻も耳も大きいこのキャラクターはギレルモ・デル・トロ作品でおなじみのダグ・ジョーンズが演じています。クレジットを見たときにはやられたと思いました。

そんなスファール監督の遊び心もあってこの映画はふつうの伝記映画にも、音楽映画にもなっていません。まずはゲンスブールの少年時代から始まり、いきなり海辺で女の子から「醜い子はイヤ」と言われてしまいます。ふつうの映画ならこれをキーとしてコンプレックスを抱える様子を描くのですが、そういったフォローはほぼありません。もう一つのコンプレックスといえば彼がユダヤ人ということですが、単に差別される側がかわいそうといった視点ではなく、それを逆手に取った手法で見せてくれて痛快ですらあります(実際に彼がそうしたかは知りません)。この映画のゲンスブールは初めから後の人が知っているようなゲンスブールの性格や資質を有しているのです。その結果、少年ゲンスブールが大人びた行動をしても違和感はありません。成長過程における悩みや葛藤といったシリアスな部分を出してこそ伝記映画だと言う人には物足りないでしょうが、そうした湿っぽい要素を薄めることに成功しています。

前半は音楽家としてデビューするまでが描かれます。親からピアノ・レッスンを受ける一方で絵の勉強もしていて、女好きの面を見せるなど、早くもマルチな才能の片鱗を見せます。後半は邦題にもあるように女たちとの話が中心です(『レッドクリフ』のように誰誰が出てきたと字幕では説明されませんが公開バージョンではどうでしょうか)。ここではフランス・ギャル、ブリジット・バルドー、ジェーン・バーキンの3人が中心です。フランス・ギャルは完全に躍らせられているのに、本人は無自覚というアイドルの魅力(誰が言ったのは忘れました)が全開です。半裸で歌い踊るバルドーはこの映画一番の見所で、顔を似せるというよりは雰囲気をうまく出しています。そしてバーキン、じつは外見(とくに口元)はあまり似ていないので不満が残ります。しかしこれは意識してやっているのではないでしょうか。一般的にはセルジュ・ゲンスブールの女といえばバーキン、だからこそ必要以上に似せてしまうとシリアスになってしまい映画のカラーから外れます。「数々の女性と浮名を流しながら、真実の愛があったのはバーキンだけ」となるとつまらないので、そういう映画は別に作ってもらいましょう。ただセリフで不満なのはゲンスブールがバーキンに対して「君は泣き顔がきれいだ」と言うところです。あの手の顔は笑顔に尽きます。バーキン役に文句をつけてしまいましたが演じたルーシー・ゴードンは残念なことに撮影後に自殺したそうです。

この3人とセルジュ・ゲンスブールの関係にはそれぞれ障害があります。フランス・ギャルは父親が彼女を厳しく管理、ブリジット・バルドーは人妻、ジェーン・バーキンはかなり年下のイギリス人。ゲンスブールが危険なところに飛び込むのが好きな性格が分かります。

女性歌手の後にはレゲエ・アレンジのフランス国歌(「ラ・マルセイエーズ」)についての騒動が続きます。このジャマイカ描写の手抜きな雰囲気なのがまたいい感じです。知っている人も多いと思いますがこの曲の歌詞は過激なもので、それを単に文面で読むよりはこうしてメロディ付きの対訳で読むとすっきり入ってくると思います。このころは酒や煙草で体調も悪くなり死を意識させたと思ったら、映画は唐突に終わります。音楽だけでも娘のシャルロット・ゲンズブール、ヴァネッサ・パラディを手掛けているのですが、さすがに彼女たちのエピソードを入れるのはまだ早いということなのでしょう。

セルジュ・ゲンスブールを演じたのはエリック・エルモスニーノ、『夏時間の庭』に出ていたそうですが記憶にありません。今回画像検索してみましたが、彼の素顔を見ると役のために鼻に入れ物をしたとかはないようです。パーツが似ているというよりは角度やポーズの研究成果が見所です。

ゲンスブールを歌う女たち
ゲンスブールを歌う女たち

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