『ハウ・トゥ・ビカム・クレアヴォヤント』ロビー・ロバートソン。力作だが物足りない点もある
2011 / 05 / 26 ( Thu )

ハウ・トゥ・ビカム・クレアヴォヤントロビー・ロバートソン

『ハウ・トゥ・ビカム・クレアヴォヤント』ロビー・ロバートソン How to Become Clairvoyant / Robbie Robertson

バンド/グループが分裂し、片方に対して"あれは売れ線だから"と言えたら批評としたらどんなに楽だろう。と、ザ・バンドのギタリスト、ロビー・ロバートソンの新譜を前にそう思う。ロバートソンがザ・バンド後に作ってきた音楽は売れ線どころかとても真摯なものだ。その一方でマーティン・スコセッシと組んでの映画音楽での仕事は"あいつは楽な道を選んだ"と言われかねない(「ハスラー2」でエリック・クラプトンと組んだ主題歌はもろに売れ線)。誰だって生活のために仕事をしなくてはならない。ロバートソンの場合、その一つが映画音楽だったのだ。しかしその姿勢が"売れなくなったら、地元のクラブに帰って演奏するよ"というものでないので元ザ・バンド・メンバー(というかレヴォン・ヘルム)と相容れないのも事実である。この溝を埋めるにはガース・ハドソンのような純天然音楽家が必要なのだ。

このロビー・ロバートソン久々のソロ・アルバムにはエリック・クラプトンが多くの曲で(作曲も含んで)参加している力作になっている。問題があるとしたらクラプトンを初めとするゲストによる上物ではなくリズム(・セクション)にあると思う。ピノ・パラディーノとイアン・トーマスによるリズム隊を基本として、ジム・ケルトナーも参加している。またマリウス・デ・ヴリーズが仕切ってのモダンなアレンジもある。前者を重視して生々しい音にするか、後者を重視して人工的なバックを活かすのかのどちらかだと思うのが、中途半端に感じる。このあたりは本人よりもマリウス・デ・ヴリーズの責任が大きい。本人のボーカルはダミ声というのとは違うが、それこそボブ・ディランがきちんと歌おうとしている歌い方で意外に足を引っ張る。

クラプトン参加曲では「フィアー・オブ・フォーリング」がU2の「ワン」に似ていてロバートソンのファースト・ソロにU2が参加していたことを思い出す。この曲ではスティーヴ・ウィンウッドも参加しているが彼のオルガンならもっと聞きたい。「ヒー・ドント・リヴ・ヒア・ノーモア」はロバートソンのガット・ギターとクラプトンのスライド・ギターの絡みは面白いが曲としてはイマイチ。ギターの掛け合いならアダルトな曲調の「ディス・イズ・ホェア・アイ・ゲット・オフ」の方が聞き応えがあり、むしろこちらを推したい。「シーズ・ノット・マイン」はダニエル・ラノワ的音空間が聞かれる。「ウォント・ビー・バック」はボーナス曲でデモが収録されているので曲順を変更してこれから聞くようにしている。

クラプトン以外で注目のゲストはロバート・ランドルフ(イニシャルがロビー・ロバートソンと同じだ)、ゴスペル界の人だが唯一無二のスティール・ギターで他流試合もこなす。1曲目「ストレイト・ダウン・ザ・ライン」は2人の掛け合いもいいのだが、後半のコキコキしたロバートソンのギター・ソロが良い。

若手(という表現は相応しくないがあくまでも主役陣との比較)で参加しているのはトレント・レズナーとトム・モレロ。どちらかと言うとトレント・レズナーの勝ち。ダニエル・ラノワ的音空間の前曲からのムードを引き継いだ「マダムX」で不気味な音世界を作り出している。一方トム・モレロが参加した曲は「アクスマン」。Axは斧のことで転じてギターのことを指すので当然歌詞はギタリストに関すること、聞く前には多くのギタリストのパロディが聞かれるクリス・スペディングの「ギター・ジャンボリー」のような曲かと思ったがそうではなかった。

それ以外ではしっとりとした曲調にバック・コーラスも決まっている「ホェン・ザ・ナイト・ウォズ・ヤング」が良い。タンゴとジャンゴ(・ラインハルト)という異国の香りを題名に織り込んだ「タンゴ・フォー・ジャンゴ」の雰囲気は映画的でラストにふさわしい。
00 : 55 : 31 | 音楽 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
<<レイトン・ミースターとのコラボレーションが待たれるチェック・イン・ザ・ダーク | ホーム | エミー・ファン!ブログ 2011年5月の告知と情報とニュース>>
コメント
コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://emfanjp.blog18.fc2.com/tb.php/796-35d859e3
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |