『ツリー・オブ・ライフ』試写会。 『デビル』と宗教との関わり方を比べるのも面白い
2011 / 08 / 05 ( Fri )
ツリー・オブ・ライフ / The Tree of Life
2011/08/12公開 公式HP:http://www.movies.co.jp/tree-life/
ツリー・オブ・ライフ ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]
Blu-ray:2012/03/07発売

寡作で知られるテレンス・マリック監督新作はブラッド・ピット主演作です。もちろん一筋縄にはいかないものの、最初の方にヒントはいくつか転がっているのでさほど難解ではありません。それでも明確なストーリーがあるわけではないので、どこに落ち着くか分からないという点では不安を感じる人も出そうです。前半で主に描かれるのは自然と人間の対立です。西洋人と日本人では自然に対する考え方が大きく違います。それは八百万の神の国である日本人とキリスト教徒(GODの意味で使われるYOUがとても多いです)の違いでもあります。たとえば311を天罰だという声があったとしても、西洋人は神から人間への仕打ちのために自然を利用したと考え、日本人はいつもならやさしい母なる自然が時おり見せる厳しい面ととらえます。日本人にとっての神は自然と同化されているか、いつもは意識しないような曖昧な存在です。西洋人にとっての自然ははじめから脅威であり、押さえ込むべき対象となっています。彼らは自然を壊すためにプロメテウスの火を使い、自然を壊して文明を築き上げました。この映画ではそうした対立構造を恐竜から人類の起源まで使った幻想的な映像を交えて1950年代のアメリカで話が展開します。

やがてその対立は絶対的な父権を振りかざす父親オブライエン氏(ブラッド・ピット)とそれに抵抗する子供たちと母親(ジェシカ・チャステイン)という構造に収斂されてゆきます。熱心なキリスト教信者の父親が神を、母親が自然を象徴していることになります。父親は母親をコントロールしようと力を振るうのです。ただしここは単なる家庭不和にも見えてしまい退屈するのも事実です。この映画はヨブ記が引用されますが、次男を失うなど父親は自分が正しいと思うことをいくらやっても報われず、いらだつ場面が多いです。

この映画にはキリスト教への不信を感じます。宗教不信に陥ったときに、ヨーロッパなら土着的な信仰に返ることができますが、白人移民が作り上げた国家であるアメリカではそれが難しいので、その代わりに他の文化から何らかの思想を導入する必要があります。監督のひとつの狙いはそのへんにあるのではないでしょうか。前作『ニュー・ワールド』ではイギリス人側の砦内の寒々とした風景とインディアンの豊穣な土地が対比されていたように記憶しています。

オブライエン氏の息子ジャックは父親に反抗しています。しかしショーン・ペン演じる成長したジャック(建築家という資料もあるのですが、劇中で言及されていたかは憶えていません)がいる場所は直線的なデザインの建物です。自然と真逆なデザインはキリスト教的と言えます。これはジャックが父親に抵抗しながらも父親と似たように家庭しか築けなかった可能性が大です。父親の持っていた古い価値観に抵抗しようとしてもそこから逃れることはできないのです。同じように今のアメリカに不満を感じても、自分がアメリカ人であることから逃れなれないというのが監督の主張だとするのは考えすぎでしょうか。

俳優ではブラッド・ピットが中心にいます。いらいらした父親という役で、とくに子供たちには憎まれないといけません。ブラッド・ピットは大熱演ではないもののけっこう難しい役だと思いました。それよりはオブライエン夫人を演じたジェシカ・チャステインのほうが印象に残りました。これまで知らなかった女優ですが、赤毛に柔和な表情が特徴的です。3人兄弟ではジャックを演じたハンター・マクラケンの冷たい表情が起用された一番の理由ではないでしょうか。これに対して次男R.L.を演じたララミー・エップラーはどことなく女優のミシェル・ウィリアムズに目元と口元が似たやさしい表情をしています。三男スティーヴは単純にかわいいです。などと書いていますが、物語中でこの3人のキャラクターや名前を覚えきれていませんでした。監督にそうした意識がないのでしょう。最後に現在のジャックを演じるのはショーン・ペン、苦虫を潰したような表情で、これを長時間見ると辛いのですが、出演時間が短いと逆に効果的です。

テーマ:☆試写会☆ - ジャンル:映画

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