『J・エドガー』試写会。 『リアル・スティール』より凝った構造がやや引っ掛かる
2012 / 01 / 26 ( Thu )
J・エドガー / J. Edgar
2012/01/28公開 公式HP:http://wwws.warnerbros.co.jp/hoover/
J・エドガー ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産) [Blu-ray]
Blu-ray:2012/06/02発売

ギャング映画では彼らの天敵となることが多いFBI長官J・エドガー・フーバー、この映画は色々なことを暗示しながらも、その根拠となるものをぼかしているのが特徴です。それに対してずるいという意見もあるでしょうが、事実の断片から都合の良い物語を作り上げようとしないのは好感が持てます。

映画は80近いフーバー(メークをしたレオナルド・ディカプリオ)が回想録のために部下に書き取らせている場面から始まります。正統的伝記映画にするなら秘書のヘレン・ギャンディ(ナオミ・ワッツ)に回想させるでしょうがクリント・イーストウッド監督や脚本家ダスティン・ランス・ブラックはそうしません。ここでは聞き手が一人ではないことも重要で(『ゴシップガール』ファンはこの中にエド・ウェストウィックがいることにも注目!もちろんアーミー・ハマーにも)、じつは彼本人が語る話がどこまで真実か分かりません。

フーバーは、1920年代の司法長官宅へのテロを切っ掛けに共産主義や外国人に対する嫌悪感を強くし、彼らに難癖をつけてアメリカから追い出します。このころからフーバーの政治欲が出てきたようです。この後時代は一挙に飛びますが、左翼は彼にとってずっと敵です。でもいつのころからか政治家の小さな左翼的部分を拡大解釈して「ヤツは左翼だ」と決め付けているように感じました。晩年になると左翼は嫌う理由から、自分が気に食わない人間へのレッテルへとなっているわけです。

この映画ではフーバーを他人に自分の姿を必要以上に大きく見せようとする人物だとしています(実際に自分やFBIを正義の味方として宣伝するやり方はうまいなあと関心させられます)。では、その原因はどこにあるか、映画はまず支配欲の強い母親(ジュディ・デンチ)を登場させます。彼女のせいでフーバーは自分の内面を出すよりは外面をきれいに見せることに重きをおくようになります。その内面というのがホモセクシャル要素です。しかし映画では決定的な部分は描きません。そのためプラトニックなホモセクシャルかのように見えます(それこそ母親の抑圧や、自分の社会的立場によって、したくても出来なかったかのように)。とはいえ一箇所、感情が盛り上がる場面があります。また女装場面もあり、それに関しては母親が語る女装をしてきた小学生の末路が不気味で、印象に残りました。

そんなフーバーが自分の武器として使ったのが有名人への盗聴です。それは本来なら上司である大統領への武器にもなります。ある人物への脅迫状を考える場面では、彼のやり方が時代遅れになったことを示しています。俳優が演じて出てくる有名人はリンドバーグ、ロバート・ケネディ、そしてニクソン大統領。ニクソンとの攻防は短いとはいえ狐の騙しあいのようで面白いのですが、我々は皮肉にもニクソンがフーバーは完全に陥ることがなかった罠に嵌ってしまったことを知っています。

レオナルド・ディカプリオは老けメークと今の顔を使い分けます。老人が過去を回想する映画はよくあるのですが、今作では老けフーバーと若いフーバーが交互に出てきます(体感では半々)。こうなると老けメークに対する違和感が増してしまうのは残念で、この映画の構成ゆえの問題点です。フーバーのパートナーであるクライド・トルソンを演じるのはアーミー・ハマー、この人は体が大きくて声がこもっているので少し表現力に物足りなさを感じます。逆にディカプリオは声が高めなので老人を演じるのに不利という弱点もあります。このふたりの関係はハンカチを小道具に使ったロマンティックな表現がイーストウッドらしくて良いです。とくにふれることが出来ませんでしたが、これまた老けメークで老人になるまでを演じるナオミ・ワッツの演技は良いです。

州のを越えた事件に対応できるFBIを作り、科学捜査を導入したフーバー、彼が使ってきた盗聴という方法は、今やコンピューターを利用して盗聴以上のことができるようになりました。政治家や有名人がその被害を受けているはずです。また晩年のフーバーは自分の信じる正義を決める軸がはっきりしなくなり、敵を作り続けることにより生き延びようとしているように見え、それがどこか現代に通じるものがあるように思いました。

テーマ:☆試写会☆ - ジャンル:映画

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